プーチンの政敵が次々と排除された

 プーチン批判を繰り返した結果、命運を絶たれた政治家は少なくありません。

 よく知られているのは、ソ連崩壊直後のエリツィン政権時代にロシアの第1副首相を務めていたボリス・ネムツォフ氏です。

 同氏はその後、「西側の大規模な投資を呼びこみ、ロシア経済を混乱させた」などとして保守派から批判され、次第に体制側と距離を置くようになります。そしてプーチン政権の誕生後は野党指導者として活動していました。 

暗殺されたボリス・ネムツォフ氏。エリツィン政権時代に第1副首相を務め、「ロシア経済を混乱させた」として保守派から批判されていた(写真:TASS/アフロ)

 そんなネムツォフ氏は2015年2月27日夜、モスクワ市内で暗殺されました。レストランで会食後、何者かが発した銃弾が4発命中したのです。その数日後には、ネムツォフ氏やナワリヌイ氏らが呼びかけ人になった「反プーチン・デモ」がモスクワで行われる予定でした。55歳でした。

 そして2人目。英国系ロシア人で、ジャーナリストや映画監督でもあるウラジミール・カラムルザ氏も知られた野党指導者でした。過去に2度、毒殺されかけましたが、政治団体「オープン・ロシア」の副議長を務め、プーチン政権を真っ向から批判していました。

ジャーナリストで映画監督でもある野党指導者ウラジーミル・カラムルザ氏は2度、毒殺されかけ、2023年に国家反逆罪などで禁錮25年に(写真:AP/アフロ)

 ところが、2023年4月、カラムルザ氏は国家反逆罪などで禁錮25年に処せられました。ロシアによるウクライナ侵攻を強く批判したことなどが罪に問われたのです。

 同じく、著名な野党指導者のイリヤ・ヤシン氏もウクライナ侵攻を批判し、投獄されました。2022年12月、YouTubeの番組内でキーウ近郊のブチャで起きた住民虐殺事件を取り上げたところ、虚偽情報を拡散した罪で懲役8年半の実刑判決を受けたのです。

虚偽情報を拡散したとして投獄された野党指導者イリヤ・ヤシン氏(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 弾圧されてきたのは、こうした政治家ばかりではありません。ソ連崩壊後に勃興した「オルガルヒ」と呼ばれる新興財閥のリーダーたちも、プーチン氏と対立する中で蹴落とされ、故国を追われるようになります。