ノーベル平和賞の共同受賞者オレクサンドラ・マトイチュクさん(左、筆者撮影)

(国際ジャーナリスト・木村正人)

ロシアは一度も裁かれていない

[ロンドン発]2022年ノーベル平和賞の共同受賞者でウラジーミル・プーチン露大統領を特別法廷で裁くことを求めるウクライナの「市民自由センター」代表で人権弁護士オレクサンドラ・マトイチュクさん(40)が8日、ロンドンの外国人特派員協会(FPA)で記者会見した。

「ロシア軍はウクライナだけでなく露チェチェン共和国、モルドバ、ジョージア、マリ、リビア、シリアでもひどい戦争犯罪を繰り返したが、一度も罰されていない。自分たちがやりたいことは何でもできると信じており、そのため私たちは前例のない数の戦争犯罪に直面している」

 マトイチュクさんは「私たちが記録しただけでもロシアが大規模な侵略を始めてから2年間で性犯罪274件を含む6万4000件以上の戦争犯罪を記録した。ロシアは被侵略国の住民の恐怖心を煽って抵抗の意思を失わせ、占領するために戦争犯罪を利用している」と指摘する。

 彼女はジュネーブ条約やハーグ陸戦条約の違反だけでなく、人間の痛みも記録している。ウクライナ戦争以上の戦争犯罪を防止したいのであれば、国家とその指導者を罰する必要がある。

 しかし、ニュルンベルク国際軍事裁判でナチスの戦争犯罪が裁かれたのはナチス政権崩壊後だった。

1945年11月、ニュルンベルク国際軍事裁判の被告席に座るナチス・ドイツの指導者たち。前列奥からヘルマン・ゲーリング国家元帥、ナチ党総統代理のルドルフ・ヘス、ヨアヒム・フォン・リッベントロップ外務大臣、国防軍最高司令部総長のヴィルヘルム・カイテル元帥。後列奥から、海軍総司令官カール・デーニッツ元帥、元海軍総司令官エーリヒ・レーダー元帥、ヒトラー・ユーゲント指導者のバルドゥール・フォン・シーラッハ、捕虜や住民の強制連行・強制労働を主導したフリッツ・ザウケル労働力配置総監(写真:AP/アフロ)