ウクライナ戦争は3年目に突入した。写真は「祖国防衛の日」の式典に出席したロシアのプーチン大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

米保守系FOXニュースの元司会者タッカー・カールソン氏が2月6日、ロシアのプーチン大統領に2時間に及ぶインタビューを敢行しました。このインタビューの中で、プーチン大統領は「ウクライナの非ナチ化」を達成することが、2年前にはじまったウクライナ侵攻の最大の目標であると強調しました。プーチン大統領は、ナチズムの信奉者がウクライナで「国民的英雄にされている」と語っていますが、それは本当なのでしょうか。

(宇山 卓栄:著作家)

ウクライナの「国民的英雄」、ステパン・バンデラ

 プーチン大統領は「ヒトラーと協力して、ポーランド人とユダヤ人、そしてロシア人への残虐な虐殺を指揮」したウクライナの「国民的英雄」として、ステパン・バンデラの名を挙げました。

 バンデラは第2次世界大戦前に活躍したウクライナ独立運動の闘士です。ロシア帝政時代に続き、ソ連時代もウクライナ人はロシア人によって支配されていました。スターリン独裁時代の1932年〜33年に、穀物の強制徴発令により、ウクライナ人が数百万人餓死したとされるホロドモールのような悲惨な出来事も起こります。

ウクライナで「国民的英雄」とされるステパン・バンデラ(写真:Heritage Image/アフロ)

 ロシア人支配から脱却するため、バンデラのような民族主義者が戦います。バンデラはウクライナ民族主義者組織(OUN)に所属していました。OUNは右翼民族主義団体で、反ユダヤ主義、反共産主義を掲げていたことから、ナチスとも連携し、ファシズムに傾斜していました。OUNはプロパガンダや政治手法、組織運営などをナチスから学んだとされます。

首都キーウにはバンデラの名を冠した通りも

 プーチン大統領はインタビューの中で、「第2次世界大戦が勃発すると、この極めて民族主義的なエリートの一部は、ヒトラーが自分たちに自由をもたらしてくれると信じて、ヒトラーに協力した」と述べています。バンデラのようなウクライナ民族主義者がナチスと連携していたことは事実です。

 さらに、プーチン大統領は今日の状況について、「ウクライナでは、こうした人々が国民的英雄にされている。その人たちの記念碑が建てられ、国旗と同等に掲げられる。ナチスドイツのように、松明を持って歩く群衆が彼らの名前を叫ぶ。ポーランド人、ユダヤ人、ロシア人を絶滅させた人々である。この習慣を止め、この概念の普及を防ぐ必要がある」と述べています。キーウには、バンデラの名を冠した通りもあります。

 プーチン大統領の言うように、今日のウクライナ民族主義者はバンデラらを崇敬し、彼らの精神を継承しようとしています。プーチン大統領が繰り返し主張する「ウクライナのナチス」とは彼らのことです。