日韓関係の懸案となっている徴用工問題。韓国の最高裁は韓国人の元労働者へ賠償するよう日本企業に命じる判決を出しており、差し押さえられた日本企業の資産が現金化される懸念がある。日本との関係改善を重視する尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は、問題解決に意欲を見せるが、日韓の隔たりは大きい。歴史に詳しい著作家で、近著に『民族と文明で読み解く大アジア史』(講談社+α新書)がある宇山卓栄氏は、尹大統領はじめ韓国の政治家には「用日」の姿勢があると解説する。
(宇山 卓栄:著作家)
日本から金銭や技術を引き出す「用日」
8月19日、韓国大法院(最高裁判所に相当)は元徴用工のための賠償資金調達に関し、日本企業が韓国国内に持つ資産を現金化する最終決定を先送りしました。日本との関係破綻を防ぎたい尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が外交部を通じて、決定を見送るよう大法院に要請しており、大法院もこれを受け入れた格好です。
日韓関係改善に意欲を見せている尹大統領は、日本の主権を侵害せず、日本企業に実害が出ない形での「解決策」を検討しているとのことですが、いわゆる「代位弁済方式」と呼ばれるもので、韓国政府が先に元徴用工への賠償金を支払い、後に、韓国政府がその立て替えた賠償金を日本企業に請求するとしています。その妥協的「解決策」は、日本側が受け入れられるものではありません。
日本企業に「実害」が生じないのは一時的なことであり、韓国政府が後に請求すれば、実害が生じることになります。これとは別に、韓国政府が設置する元徴用工らのための基金に、日本企業が自発的に協力するように要請する案などが出ていますが、これは結局、補償金請求と何ら変わりません。
そもそも、1965年の日韓請求権協定によって、元徴用工への損害賠償を含む戦後補償は解決しているのです。
経済の悪化に困窮している韓国は日韓関係の改善により、状況を打開したい狙いがあるようですが、韓国の「用日」に、日本はこれ以上振り回されるべきではありません。
韓国人は政治家でも財界人でも、親日か反日かは別として、皆一様に「用日」です。「用日」というのは、日本から金銭や技術などの支援を引き出し、日本を利用することを意味します。