(宇山 卓栄:著作家)
「王太子」だと「皇太子」より格下になってしまう
エリザベス女王逝去に伴い、9月10日(現地時間)、新国王チャールズ3世がロンドンのセント・ジェームズ宮殿で正式に即位を宣誓しました。
日本では、チャールズ新国王は「チャールズ皇太子」と呼ばれていました。本来ならば、エリザベス女王は皇帝ではないので、その王位継承者は「皇太子」ではなく、「王太子」と呼ばれなければなりません。にもかかわらず、なぜ、「皇太子」と呼ばれていたのでしょうか。
それは、日本にもともと「王太子」という言葉や称号がなかったからです。「王太子」とすると「皇太子」よりも格下の扱いになってしまうことの配慮であり、「王太子」を避け、「皇太子」と呼ぶことが慣習的に定着したようです。日本では一般的に、イギリスをはじめ、ほかの国々の王太子も全て「皇太子」と呼ぶ習慣があります。
しかし、これは、本来はおかしな話です。
「王太子」が「皇太子」よりも格下の扱いとなり不都合であるならば、「王」も「皇帝」と呼ばなければ格下の扱いとなり不都合になってしまいます。「王」を「皇帝」と呼ばないならば、「王太子」を「皇太子」と呼ばないのが当然の理です(ただし、かつて明治時代の一時期に、諸外国の王を一律に「皇帝」と呼び、外交文書にもそのように記していたこともありました)。
ウィリアム王子は王位継承第1位になったので、太子となります。本来ならば、「ウィリアム王太子」と呼ばれるべきですが、ほとんどのメディアは「ウィリアム皇太子」としています。
「王子」という呼称をそのまま使えばよいではないかとする声もありますが、「王子」だと第1継承者とその他の継承者との区別がつきません。