2期の真実和解委は文在寅政権下の2020年に立ち上がった(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(羽田 真代:在韓ビジネスライター)

 今、35の国と地域で話題沸騰中の韓国ドラマがある。「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」というNetflixのドラマだ。

 主人公は自閉スペクトラム症(対人関係が苦手・強いこだわりといった特徴を持つ発達障害の一つ)を抱えている新米弁護士の女性だ。彼女はソウル大学の法学部を主席で卒業。IQ164という天才的な頭脳を持ち、一度見たものは絶対に忘れないという驚異的な記憶力を持っている。

 このドラマは、そんな彼女がさまざまな事件を解決していく内容だ。35の国と地域のテレビ部門でNetflixのトップ10入りを果たし、韓国内外で話題となっている。

 あまりの人気ぶりに、韓国のニュース番組では障害者特集が何度か組まれて放送された。ひと昔前の韓国では障害者が働ける場所はわずかだった。日本同様、今では韓国でも障害者を積極的に採用しようとする企業が増えた。ニュース番組の特集では、そんな障害者の働く姿や、両親の思いなどにスポットを当てて報じられている。

 障害者に対する認識が徐々に変わり始めたこのタイミングで、軍事政権時代の衝撃的な事実が明らかになった。

 1960年から90年代はじめに、釜山市で警察と市が“不良”とみなした多数の少年らを「兄弟福祉院」という福祉施設に収容した事実を、「真実・和解のための過去史整理委員会(真実和解委)」が明らかにしたからだ。

 被害者は虐待や強制的な労働を強いられた。1975年から88年には収容中の死者が678人に上った。

釜山にあった兄弟福祉院の収容施設(写真:Yonhap/アフロ)

 真実和解委とは、2005年5月に韓国の国会で可決した「真実・和解のための過去史整理基本法」を基に、同年12月に独立政府調査機関として発足した委員会だ。

 同委員会は2010年にいったん解散したものの、文在寅(ムン・ジェイン)政権下の2020年に、真実・和解のための過去史整理基本法を発展させた「真実和解法(真実・和解のための過去史整理基本法)」が通過したことにより、同年12月10日に2期の真実和解委が発足した。メンバーは学者や弁護士、牧師らで構成されている。

 真実究明の範囲は、1期も2期も「日本による植民地時代―解放政局―6.25戦争(朝鮮戦争)―権威主義統治(盧泰愚<ノ・テウ>政権まで)」である。