ロシアのプーチン大統領ウクライナに続きバルト三国の侵略作戦をひそかに温めていると見られるロシアのプーチン大統領(写真:代表撮影/AP/アフロ)

世界の“お尋ね者”が他国の首相を指名手配する愚行

 2024年2月中旬、「ロシア内務省がバルト三国の首相らを指名手配に」という一部報道があり、「ロシアの警察組織が外国の元首を逮捕できるのか?」と、疑問の声が上がっている。あくまでも表向きはロシア内務省の発表だが、プーチン氏の意向であることは明らかだろう。

「新たな侵略を前に反応を見定めるロシア側の瀬踏みではないか」との憶測もあるが、“お尋ね者”になったのは、エストニアのカラス首相を筆頭に、ラトビアの法相、リトアニアの文化相など、バルト三国の政府首脳・幹部や国会議員たちだ。

 罪状は、各国内の旧ソ連軍兵士の像を撤去・破壊して英雄を侮辱した罪と、ナチスを容認した平和に対する罪らしい。第二次大戦で、ナチス・ドイツの軛(くびき)から「バルト三国を解放した」と主張するソ連軍を讃える記念碑だが、ロシアのクリミア侵攻以降は、バルト三国の国民にとって憎悪の対象だった。

 バルト三国は第二次大戦中の1940年にソ連に併合され、冷戦終結を機に1991年にそろって再独立を果たす。ただしロシアは依然として陸続きの仮想敵国で、三国は迷わずNATOに入り安全保障を強化している。

ラトビア軍特殊部隊ロシア侵略軍に対する撹乱作戦の訓練を行うラトビア軍特殊部隊(写真:ラトビア国防省Webサイトより)

 実は現在、プーチン氏自身が追われる身で、ウクライナ戦の最中、占領地から多数の子供を強制的にロシアへと“誘拐”した戦争犯罪の容疑で国際刑事裁判所(ICC)から国際指名手配されている。

「世界のお尋ね者が、他国の首脳を指名手配するとは恐れ入る」と、嘲笑の的になっているが、どうやら笑い話だけでは済まないようで、この指名手配には邪(よこしま)なウラ事情が透けて見えるとの説もある。ロシアの地政学に詳しい専門家はこう警鐘を鳴らす。

「指名手配宣言は、NATOの反応を窺う“リトマス紙”と言える。この先、『ロシアによるバルト三国侵略』が隠されていることに感づくか、さらに攻め入った場合、NATOは本当に伝家の宝刀である集団的自衛権を発令して全軍で猛反撃するのか──の2点を探っているのではないか」

 プーチン氏にとっては、特にNATO主要国の「腹の据わり具合」が気掛かりだろう。事実、盤石に思えるNATOの結束も、今年11月の米大統領選で返り咲きを図るトランプ前米大統領の台頭で、危うさを増している。

 トランプ氏は、他の加盟国が相応の国防費を負担していないと憤慨。「アメリカはNATOから脱退するかもしれない」「(ロシアが攻めてきても)NATO諸国を守らず、むしろロシアに好きなようにするよう促す」などと毒づいている。このため西側諸国は戦々恐々の状況だ。

>>【写真全10枚】NATO軍が誇る兵力