(英フィナンシャル・タイムズ紙 2024年2月29日付)
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は2年足らずで、ウラジーミル・プーチン大統領との和平を目指す調停者から、ロシアと同国が欧州大陸に突き付ける数十年来の脅威について欧州で最もタカ派な発言をする人物の一人になった。
そして2月末、ウクライナに地上部隊を派遣する可能性を否定するのを拒むことでタブーを破り、欧州連合(EU)とロシア政府を一様に驚かせた。
他の欧州諸国は急ぎ、マクロン氏の発言を否定した。
だが、これはよくある外交政策上の失言ではなかった。報道陣から繰り返し出た質問に対する意図的な回答だった。
手本はユーロを救ったドラギECB総裁
パリでウクライナ支援国会議を主催した後、マクロン氏は「我々はロシアが絶対にこの戦争に勝たないようにするために必要なことはすべてやる」と語った。
派兵についての「コンセンサスはない」と認めつつ、同盟国や支援国の間で派兵が議論されており、検討課題から外すべきではないと訴えた。
非現実的なシナリオを持ち出すことで、マクロン氏は金融危機の最中に単一通貨ユーロを救うために「必要なことは何でもやる」と言ったマリオ・ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁(当時)の誓いのような瞬間を再現しようとしていた。
欧州がウクライナを助けるためにやったことは規模が小さすぎ、タイミングも遅すぎたとマクロン氏は言った。
欧州は自縄自縛から脱却し、ロシア政府の想定を変える必要がある。
マクロン氏はプーチン氏の帝国主義的な野心を、ウクライナだけでなく欧州全体に対する脅威と見なすようになった。
パリの政府高官らによると、ロシアはサイバー攻撃やオンラインの誤情報作戦、さらには空と海での威嚇戦術によってフランスに「ハイブリッド戦争」を仕掛けている。
フランスの防衛大臣は最近、ロシアは「攻撃性の度合いで新たな節目を試している」と述べ、ロシアが黒海の上空でフランスの航空機を撃ち落とそうとしたと語った。