(英フィナンシャル・タイムズ紙 2024年2月14日付)
企業の最高経営責任者(CEO)が資金調達にあたって数十億ではなく数兆ドルの金額を求める時、その業界が過熱してきたかもしれないことが分かる。
長期的には、生成人工知能(AI)は多くの業界と人の働き方を大きく変える。
だが、米オープンAIのサム・アルトマンCEOがAI向け半導体プロジェクトについて投資家と話し合っているという報道は、いくつかの疑問を投げかけた。
報道では、このプロジェクトには最大で7兆ドルの資金を調達する必要があるかもしれないと語る関係者の言葉が引用されていた。
7兆ドルというのは英国とフランスの国内総生産(GDP)の合計を上回る額であり、その数分の1を確保することでさえ、控えめに言っても無理があるように思える。
それでも、これはAIとAIを動かす半導体に対する関心が著しく高まった度合いを反映している。
AI関連企業の史上最高のバリュエーション(企業価値評価)と資金調達の目標額が想起させる歴史的な類似は、ドットコムバブル時代の通信株の大相場だ。
ネットワーク機器が王様だった通信バブル
あの当時、投資家はインターネットが世界を一変させると考えていた。そうなると、通信企業とハードウエア企業が大成功を遂げる。
問題は、業界のバリュエーションがその大々的な変化がほぼ一夜にして訪れることを織り込んでいたことだ。今、これと似たレベルの楽観論がAI関連企業の株価を高騰させている。
インターネットが最初に広く使われるようになった時には、ネットワーク機器が王様だった。サーバーを構築し、ルーターを使ってサーバーを接続する必要があった。
企業はサーバーに対する極端な需要が永遠に続くとの前提に立ち、ハードウエアを構築・購入し始めた。
米シスコのような通信関連銘柄は2000年のピークまでの数年間で30倍以上に高騰した。
だが、通信業界の崩壊は予想以上に早く訪れ(ブームから崩壊までわずか4年しかかからなかった)、そのスピードはインターネットが我々の生活を変えるペースよりはるかに速かった。
2002年までに、過剰供給が20社以上の通信会社を破綻に追い込んだ。株価は急落した。