(英フィナンシャル・タイムズ紙 2024年2月15日付)

バイデン大統領だけが飛び抜けて高齢なのではない。写真は現在81歳の共和党ミッチ・マコネル上院院内総務(2022年9月13日撮影、写真:ロイター/アフロ)

 米国の民主主義が抱える難問を表す一つの指標がある。

 ガタが来始めた二大政党支配に挑む「第三党の候補者」たちの年齢が現職とほとんど同じなのだ。

 ジョー・バイデン氏は81歳で、ドナルド・トランプ氏は6月に78歳になる。この2人の対抗馬になり得る面々は全員70歳以上だ。

 何らかの形で独立候補として参戦を検討しているのは、ケネディ元大統領の甥にあたるロバート・F・ケネディ・ジュニア氏(70歳)、民主党上院議員のジョー・マンチン氏(76歳)、「緑の党」のジル・スタイン氏(73歳)、作家のマリアン・ウィリアムソン氏(71歳)、そして大学教授のコーネル・ウエスト氏(70歳)だ。

 こうしたベビーブーマーは、古いやり方が米国の期待を裏切ったと口をそろえる。そして、有権者が検討すべき代わりの古いやり方があると訴えている。

政治指導者と有権者の年齢のミスマッチ

 連邦議会はどうか考えてみるといい。上院議員の年齢のメジアン(中央値)は65歳だ。これは米国の航空会社のパイロットが引退しなければならない年齢だ。

 上院では民主党のチャック・シューマー院内総務が73歳で、共和党のミッチ・マコネル院内総務が81歳だ。

 最高齢はマコネル氏の同僚のチャック・グラスリー氏(90歳)で、2028年の選挙で再選を目指すことを先日明らかにした。上院議員を101歳まで続けることを視野に入れている計算だ。

 そうかと思えば、ミット・ロムニー氏(76歳)が政治家として最も脂の乗った時期に引退を決めたことに、人々はいまだに唖然としている。

 上院左派の筆頭はまだバーニー・サンダース氏(82歳)だ。元ライバルで時折手を組むこともあったエリザベス・ウォーレン氏は74歳だ。

 バイデン氏が飛び抜けて高齢だと誰が言えるのか。

 連邦議会下院議員の年齢の中央値は58歳で、米国民全体のそれに少しだけ近くなる。だが、それでもその差はまだ大きい。

 下院には、40歳より若い議員が7%しかいない。米国民の年齢の中央値は38.9歳で、国民の半分がこれより若いことになる。

 連邦議会という米国最強の権力機構においてマイノリティー(少数派)を代表するメンバーの割合が非常に小さいことには疑問があるし、問題視されるべきだ。

 しかし、米国の政治指導者と有権者との年齢のミスマッチほど甚だしいものはない。

 これではまるで、米国が眠りに落ち、不意に目を覚ましたらレオニード・ブレジネフ時代のソビエト連邦になっていたようなものだ。

 最高指導者のブレジネフは75歳で死去した。