頑張ること、我慢することを教えるために

──母親が、父親がと言うのではなく、夫婦でお互いの足りないところをサポートすることが大切だということでしょうか。

榎本:母親が保護機能を中心に発揮しているとしたら、母子が密着しすぎないように一歩距離を置いて接していく、というのは重要になってくると思いますね。

「もうちょっと頑張れよ」「少し我慢しないとね」などと声をかけて、遊びの中で頑張ることや我慢することを教える。そうやって心を鍛えず、ただ可愛がるだけでは、思い通りにならないと嫌になり、頑張れない子、我慢ができない子になってしまいかねません。

 私は父性や母性というのは、親の性別に固定されるものではないと言いました。つまり、母親や父親の性格によって、どちらが保護機能や鍛える機能を発揮しても構わないのです。

 どちらかがいつも厳しい存在になるのではなく、必要に応じてお互いの役割を変えることができれば、それは子どもにとって安心できる場所が増え、よりのびのびと過ごすことができることにつながります。親側も、お互いが父性と母性の立場の両方を担うことで、一方だけを負担した時のようなストレスが減り、いくらか気楽に子育てができるかもしれません。

 例えば、何か子どもに注意をしなくてはならない場面で、つい少し厳しく言い過ぎてしまうことがある。人間だからそういうことはきっとあるでしょう。そういった時に、もう片方の親がフォローを入れる、優しく教え諭す、厳しさを少し中和する機能を果たす。そんなふうに、両親でお互いのバランスを補い合えば良いのではないでしょうか。

──本書では、IQばかりではなく、内面的スキルである非認知能力や、心の知能指数と呼ばれるEQを養うことの重要性についても言及されています。日本人はIQに重きを置きすぎて、EQをおろそかにしていると感じますか。