米国人が反省したIQ重視の後を追う日本の愚
榎本:もともとIQを重要視していたのは米国で、頭が良いことこそが素晴らしいことだと考えられてきました。でも、かつての日本はその逆で、EQの高さ、つまり他人への共感性とか衝動をコントロールする力、忍耐力などに重きを置いた子育てをしていました。
そんな米国では昨今、IQ重視の子育てのあり方を見直し、心の成熟度でもあるEQを伸ばすように方向転換を始めています。それはなぜかというと、EQが高い子どもの方が将来的に高学歴だったり、年収が高かったりするというデータが出てきているからです。
映画やスポーツを見ていて感じたことがあるかもしれませんが、米国人はしっかりと自己主張をし、何か気に入らないことがあれば衝動的に気持ちをぶつけることがある。例えば、激高して机を叩いたり椅子を蹴ったりするわけです。
でも、こういった衝動をコントロールできないと、社会でせっかく手に入れた地位や信用を一気に台無しにしかねません。そこで、情緒的な知能指数とも言われるEQが注目されるようになってきました。
ところが、日本はいわば米国コンプレックスで、かつての米国の失敗を真似するような方向へと向かっています。自己主張をすることが善で、我慢するような時代じゃないと言い出しているのです。
米国では、我慢する力を持つことが高収入につながっているというデータも出てきているのに、日本は逆方向へと走り出している。米国人が反省して改めようとしている「衝動的で我慢ができないわがままな人間像」を今の日本が作ろうとしているわけです。
せっかく日本が子育てで大切にしてきたEQ、非認知能力を、今まさに破壊しようとしている、この問題の深刻さに我々は気づかなければならないと思います。