パパがカミナリ親父になる必要はある?

──子どもが1歳になるくらいまでの、父親の役割というのはどのようなものでしょうか。

榎本:1歳くらいまでは、父性・母性の役割に明確な線引きをせずにいてもいいとは思います。ただ気持ちの上で、例えば、配偶者の子どもへの関わり方を見ていて、何か欠けている部分があれば、それを自分が補うように意識することは大切です。

 ただ、2、3歳くらいからは徐々に心を鍛えていく必要はあると思います。というのは、子どもは3歳になると幼稚園などに入園します。今までは親が子ども目線でいてくれましたが、友達同士ではそうはいかない。外の社会に触れるためには、ある程度の心のタフさや社会性が身についていなければ適応できません。

 こういった1歳以降のことも念頭において、ビジョンを持って子育てをすれば、必然的に子どもとの関わり方も変化してくると思います。

『イクメンの罠』を上梓したMP人間科学研究所代表・榎本博明氏

 ただ、きちんと子どもを導こうと思って最初から「怖いオヤジ」になる必要はありません。小さいうちにしっかり慣れ親しんで、愛着を形成してこそ気持ちが通じ、後々厳しく鍛える機能を果たすことができるのです。できるだけ多くの時間を共に、密に過ごすことが重要です。

 よく父親は遊ぶだけなんて非難されることもありますが、遊ぶことはとても大切です。人間は遊びを通して人との距離感などの社会性を身につけます。きちんと社会性を身につけないと、人との関わり方が苦手になったり、引きこもりになったりなどの社会問題につながっていく可能性もあります。

 ボール遊びやジャングルジムなどを積極的にやらせる、でも小さな子をいきなり外に出すのは当然危険もあるので、母性的な保護機能を併せ持ってしっかりと見守るなど、自分の立ち位置を自覚すると見えてくることがたくさんあると思います。