子どもの心を鍛える場所は家庭以外になし!
──近年、小学生による暴力行為が急増するなど、子どもたちの衝動をコントロールする能力の低下について本書で指摘されています。どうすれば、自制心のある子どもへと育てることができるのでしょうか。
榎本:子どもたちの衝動コントロール能力が低下しているのは、やはり我慢させることをしっかりと親が教えていない家庭が増えたのが一因だと考えています。ほめて育てることばかりが広がって、「キツいことを言うと子どものトラウマになってしまう」などという人まで出てきている。厳しくすることと虐待を混同するような思想が、世の中全体に広がってきている。
子どもを取り巻く環境というのは大きく変化しています。かつては学校などの教育現場でも厳しく指導する姿勢がありましたが、今ではそういったことは減りました。子どもを鍛えようと思って厳しく指導をすれば、親やメディアから責められて問題になってしまう。そうなると、教師自身が処分されかねない。
教師としても、自分の家族をまず守ることが前提になってきます。熱血教師は解雇されて、他人の子だから注意すべきところでも別に叱らなくてもいいや、という教師が守られている。そんな現状は間違っているように感じますね。
でも、世論が厳しさを受け入れない方向に向かっているため、教師としてはほめるしかない、厳しく注意をすることができないのです。
我慢することができない子は、例えば、小学校に入った時にまずじっと座っていることが難しかったり、ルールを守ることの大切さがわからなかったりする。勉強だって遊びと比べてつまらないからと、フラフラ立ち上がって教室から出ていってしまう。
学校は、そうやって出ていく子を追いかけるための補助教員などをあえて採用している。非常におかしなことになってきていると感じています。
では、どうしたら心の強い子が育つのかといったら、やはり親自身が責任を自覚して父性を発揮するしかありません。教育現場や外の環境で厳しさが失われてきている以上、心を鍛える場所は家庭しかないのです。小さい頃から親が父性機能を発揮して接し、子ども自身が力強く社会への一歩を踏み出せる力をつけさせる、そんな子育てをしていく必要があります。