VW「ディーゼルゲート」に匹敵する悪質さ

 豊田自動織機は1月29日、トヨタ向けに生産しているディーゼルエンジンなどでの性能試験で不正が発覚したと発表。トヨタと豊田自動織機は2014年、グループで経営資源を効率的に使っていくために、両社にまたがるディーゼルエンジンの生産・開発を、自動織機側に集約することを決めていた。

1月29日の豊田自動織機の記者会見。手前が伊藤浩一社長(写真:日刊工業新聞/共同通信イメージズ)

 不正の内容を見ると、ダイハツと同様に悪質なものもある。たとえば、トヨタのプレスリリースによると、「ディーゼルエンジン3機種の出力試験において、量産用とは異なるソフトを使ったECU(電子制御ユニット)を用いてエンジンの出力性能を測定し、測定する数値が安定するようにバラつきを抑えて報告する行為が行われていた」などとある。

 これだと、試験用の制御ソフトを使って数値を改ざんしていたことになる。2015年には独フォルクスワーゲン(VW)がディーゼルエンジンの開発で、試験時だけは有害物資の排出が減るソフトウエアを使っていたことが発覚し、「ディーゼルゲート」と呼ばれる大事件に発展したが、それと構図が一部似ているように見える。

 豊田自動織機の不正は2017~21年にかけて行われているので、VWの「ディーゼルゲート」で騒がれた以降に不正に手を染めていたことになる。そういう点でも悪質と言えるのではないか。

 ではなぜ、豊田自動織機がこのような不正を行ったのか。同社の伊藤浩一社長は会見で「トヨタと会話をしっかりできていれば問題は起こらなかったと反省している」(1月30日付、読売新聞)などと述べている。第三者委員会の調査報告書は「開発のスケジュールを守るためにプレッシャーがあった」などと指摘しており、品質や信頼よりも効率を重視したことがうかがえる。

 こうした指摘は、豊田自動織機が不正に走った直接的な要因の一つではあるのだろうが、筆者はもっと本質的な要因、すなわちこうした不正を行う組織風土ができてしまった別の要因があるように思えてならない。