「正論」を教えるだけでは不十分

 英語の文法を正しく教えたのに正しく英語が使えないとしたら、生徒の勉強不足ということにされがちだ。同様に性やジェンダーについても、正しい知識を正しく伝えれば大人の責任は果たしたことになる。でも、日々生徒たちと接する現場の教員である龍崎さんは、“正しさ”に甘んじない。あくまでも生徒の心にくさびを打ち込むことを授業の目的とする。そのために試行錯誤をくり返す。

「男子校だからこそ扱うべきテーマがある気がします。そういう取り組みを、世の中の予想を上回る形でやらないと響きません。でも、そもそも女性教員が少ないようでは何をやっても無理だと思います。ときどき虚しくなることがあるんです。副教科・非常勤・女性みたいなのと、主要教科・専任・男性みたいな構図が……」

 恋も知らない生徒たちにいきなり正論を押しつけるつもりはない。しかし職場については「いますぐに変わるべき」と、取材に立ち会った学校幹部に龍崎さんは真っ直ぐな憤りをぶつけた。その矛先は、もちろん社会全体にも向いている。

■著者
おおたとしまさ(教育ジャーナリスト)

「子どもが“パパ〜!”っていつでも抱きついてくれる期間なんてほんの数年。今、子どもと一緒にいられなかったら一生後悔する」と株式会社リクルートを脱サラ。育児・教育・夫婦のパートナーシップなどについて、執筆・講演を行う傍ら、新聞・雑誌へのコメント掲載、メディア出演にも対応している。著書は『ルポ塾歴社会』『ルポ名門校』『ルポ教育虐待』『ルポ父親たちの葛藤』『勇者たちの中学受験』など70冊以上。

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