灘高校の3年生が甲南女子大生と生理や性的同意などについて議論を交わし理解を深めた(写真:おおたとしまさ)

教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏が、男子校で広がり始めた性教育とジェンダー教育の現場に迫る連載「ルポ・男子校の性教育」。第2回は、神戸市にある私立灘中学校・灘高等学校を訪ねた。

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 1学年220人程度でありながら、例年100人近い東大合格者を出す私立灘中学・高校。特に最難関である東大医学部の歴代累計合格者数ではダントツの1位を誇る。世間からはガリ勉のイメージを持たれやすいが、制服はなく、校風はいたって自由。創立時の顧問は柔道の創始者・嘉納治五郎で、生徒の約3人に1人は黒帯をとって卒業するという一面も。

 大学受験を控えた高3の夏休み明けの公民の授業が行われる教室には十数名の女性がいた。近隣にある甲南女子大の学生たちだ。この日、灘校生たちが女性の生理やデートDV、性的同意などについて学ぶうえで、甲南女子大生たちが議論の相手になってくれるという。2コマ連続の授業を進行するのは、この特別授業の外部講師として招かれた松原由佳さん。思春期保健相談士で婦人科クリニックに勤務している。灘での講師を引き受けて3年目になる。

おおたとしまさ:教育ジャーナリスト)

高3男子に伝える「生理」のリアル

「誰かを好きになる、その先にある性のトラブルに遭ってほしくないと思って、こういった活動をしています。今日は、前半で女性の生理について、後半で性的同意やデートDVについて学びます。今日のゴールは、大切な人も、自分自身も、大切にできる方法を知ることです」(松原さん、以下同)

 どのようなメカニズムで月経が起こるのか、どれくらいの出血があるのか、なぜ月経で心身の不調が起こるのか、どういうときに生理が止まるのかなど、教科書的なことをさらっと復習しつつ、月経とともにある女性の生活や人生へと焦点を当てていく。

「現代女性は人生のなかで平均すると約450回の月経を経験するというデータがあります。昭和の初期までは子どもを産む回数が多かったり、初経が遅かったりしたので、50回前後だったそうです。体の中の生理というスクラップ&ビルドが急増しているために、トラブルが増えているといわれています。では1つめのグループワークです。体調が万全のときを100点満点とした場合、生理がいちばんつらいときの体調って何点くらいだと思いますか?」

 50人弱の生徒たちが6人ずつの班に分かれて向かい合わせに座っている。そのグループでディスカッションする。もちろん生理なんて経験したことがない。想像するしかない。大学生はまだ議論に加わらない。班ごとに発表する。だいたいの班が20点から30点という結論を出した。

「じゃあ、実際どんな感じなのかを、大学生のみなさんに聞いてみましょう。教えてくれる方、いますか?」