ゴキブリには申し訳ないが、見るのも嫌という人も一定数いる(写真:アフロ)

 ゴキブリ。その悪名は日本全国にとどろき、今日もどこかでスリッパで叩かれたり、殺虫スプレーを吹きかけられたりしてゴキブリが命を落としている。だが、捨てる神あれば拾う神あり。ゴキブリたちにとっての「拾う神」が、静岡県の磐田市竜洋昆虫自然観察公園にいる。当公園の職員であり、「ゴキブリスト」を名乗る柳澤静磨氏である。

 ゴキブリの魅力とは何か、おススメのゴキブリは──。『愛しのゴキブリ探訪記 ゴキブリ求めて10万キロ』(ベレ出版)を上梓した柳澤氏に、話を聞いた。(聞き手:関瑶子、ライター&ビデオクリエイター)

※ゴキブリの写真が多数出てくるので、虫が苦手な方はお気をつけ下さい。逆に、すべてのゴキブリの写真を見たいという方はこちらをどうぞ。

──ゴキブリの魅力について教えてください。

柳澤静磨氏(以下、柳澤):魅力、ありすぎますね。それだけで1時間は話せますよ。

 ぎゅっと濃縮して説明すると、多様性が非常に高いというところ。ゴキブリと言うと、茶色とか黒のイメージがありませんか。でも、それって家の中に出るゴキブリのイメージに縛られてしまっているだけなんです。野生のゴキブリは、黒じゃないものが多い。緑だったり、それこそ金色に輝いているゴキブリがいるんですよ。

 家に出るゴキブリは、だいたいチャバネゴキブリかクロゴキブリです。細長い楕円で、薄っぺらいものばかりですよね。野外でゴキブリ探しをしていると、そんな先入観を覆すようなゴキブリにたくさん出合えます。

 ヒメマルゴキブリはダンゴムシのような形をしていて、危険を感じると丸くなります。かわいくて、つい、つついてしまいます。

 そんな感じで、ゴキブリは色やカタチの多様性に富んでいる。これが魅力の一つかな、と思います。

──自宅にゴキブリが出た時は、どうしていますか。

柳澤:とりあえず、捕まえて冷凍庫に入れます。

──冷凍庫に!?

柳澤:はい。冷凍保存して、標本にしますね。本当はすぐに標本にしたいんですけれども、僕も一応、勤め人です。ゴキブリだけにうつつを抜かしているわけにはいかないので、時間ができた時に標本にします。

 昆虫標本をつくる時、殺した、もしくは死んだ昆虫の遺骸の保存方法って、2種類あるんですよ。乾燥保存と、冷凍保存。乾燥保存はパリパリになっちゃうので、形を整える前に水でふやかしたりと、あとあと取り扱いがめんどうくさい。でも冷凍保存は、冷凍庫から出してきてしばらくすると柔らかい状態に戻ります。なので、標本にしやすいんです。僕は断然、冷凍保存派です。

──書籍中で、ゴキブリを使って漢方薬を作るというチャレンジをしていました。その際に、「普段使っている鍋でゴキブリを茹でようものなら、同居人から非難を受ける可能性がある」と言って、ゴキブリ用の鍋を準備していましたよね。冷凍庫にゴキブリを入れることに対して、同居人の方は何も言わないのですか。

柳澤:冷蔵庫を買う時に、冷凍室が2つあるものを購入しました。一室は虫の保管用、一室は食べ物保管用になっています。分けてはいるんですけれど、だんだん虫が一室じゃ収まりきらなくて、食べ物のほうに入れたりもしています。同居人から、少し冷たい視線を感じたりしますね。

──ちなみに、自宅でもゴキブリを飼育してるんですか。