2024年4月、近江鉄道線は上下分離方式へと移行する。存廃協議の陣頭指揮を執ってきた滋賀県・三日月大造知事へのインタビューでは、自らが選挙公約に掲げ、導入を検討する「交通税」についても尋ねた。全国的にも例を見ない独自の新税で、行方が注目されている。人口減が進む中、地域公共交通の充実を図る狙いは何か。どんな暮らしを理想として描いているのか。三日月氏に聞いた。<#3>
(聞き手:土井勉、河合達郎)
ビジョン実現のための「手段」
――地域公共交通に関し、「交通税」の導入についても検討を続けてこられました。改めて、その狙いについて教えてください。
三日月大造・滋賀県知事(以下、三日月氏):まず、「近江鉄道線のために税の議論をしているのか」ととらえられることがあるのですが、決してそういうことではありません。鉄道もバスもタクシーなども含め、県内の公共交通がどうなれば、県民はよりハッピーになるのか。その姿を描き、実現のために必要であるならば、私たちが少しずつ負担、分担する形はどうなのか。そうした財源確保の1手段としての議論です。
滋賀県ではいま、県全域で公共交通のビジョンづくりをしています。地域公共交通が置かれている状況をみんなで共有しながら、どういう状態になるのがいいのか、その絵姿を描いているところです。
県内地域で見ても状況はさまざまです。公共交通がすごく便利で、日常利用が多いところもあれば、マイカー利用が主体となる地域もあります。こうした特性に応じた地域分類をしたうえで、いまよりも移動がしやすくなる公共交通像を描いており、2023年度内にまとめる予定です。
そして、そのビジョンを実現するためにはどんなことが必要なのか。公共交通事業者が頑張るところ。行政がテコ入れするところ。いろいろあると思います。その財源として、国の補助金も取りに行きます。県の補助金も使います。事業者も負担して頑張ります。
でも、それだけでは足りない分を、私たちが少しずつ担う。それが交通税という形になれば、どれぐらいの財源が得られ、どういうことができるのかということを、新年度以降で示していきたいと考えています。