昨年12月にドバイで開かれたCOP28(第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議)では南北の分断があらわになった。もはや、先進国にとって地球温暖化対策の枠組みである「パリ協定」は害毒でしかない。日本の経済を壊滅させ、中国を利する、科学ではなくカルトに基づいた鬼子になってしまった。この害毒は京都議定書に千倍する。2025年には、米国と共に日本も協定から離脱するべきではないか。
(杉山 大志:キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)
COP28の本質は南北の分断
COP28では諸国が「化石燃料からの脱却」に合意したという報道があったが、これは意図的に広められた偽情報である。
実際に合意されたのは「COP28が各国に化石燃料から移行する世界的な努力に寄与するように呼び掛けた」というだけだ。各国が約束したわけではない。しかも原子力推進や再エネ推進など、8項目もあるオプションの1つとしてこれが取り上げられたに過ぎない。
中国もインドもサウジアラビアも、この合意があるからといって石炭や石油の採掘や利用を制限しようとは微塵も感じないだろう。
他方で、全く報道されていないが、COP28の本質は南北の分断だった。
COP28に先立ち、G7合意では、途上国にも「2050年CO2ゼロ」を宣言するよう要請していた。だがこれは端から拒絶されたので議題にもならなかった。だが、この「戦わずして負けた」ことこそが、COP28の最重要な点だった。
京都議定書そっくりの一方的な協定となったパリ協定
もはやグローバルサウスもロシアもG7のお説教などに従うつもりはないことが改めて明白になった。
いまや、パリ協定は「先進国だけがCO2を2030年に半減、2050年にゼロとする約束をする」という京都議定書とそっくりの一方的な協定になってしまった。
否、数字が極端に深掘りされ経済に破滅的な悪影響を与えるものになったが故に、その害毒たるや、京都議定書に千倍する。