いま日本政府は脱炭素のためとして、さまざまな「カーボンフリー燃料」の利用に向けて、巨額の技術開発投資を行いつつある。だがその技術は、本当に実現可能なのだろうか? 巨額の浪費に終わってしまわないか? そうならないために、必要なことは何だろうか?
(杉山 大志:キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)
サルに小説を朗読させる前にやりがちなこと
「彫刻入りの立派な台座の上でサルに小説を朗読させる」という事業を構想するとしよう。そうするとタスクは2つに分かれる。
①サルを訓練して小説を朗読させる
②彫刻入りの台座を造る
あなたがこの事業の責任者だったら、まず着手すべきは何か?
立派な彫刻入りの台座は、お金をかければ、明らかにできる。あなた自身が造ったことがなくても、世の中には引き受けてくれる人や業者があるからだ。
だがサルを訓練して小説を朗読させるとなると、そもそも本当にできるのだろうか?
こう考えると、この事業における優先順位は、まずサルを訓練できるか見極めることだ。だが現実の事業では、「まず台座を造り出してしまう」ことがあまりにも多いという。
なぜそうなるのか?
たとえば国からの委託事業であったとしよう。するとあなたは絶えず何か前進しているように見せたい。だから、「はい、まず台座ができました」という安直な方向に進みやすい。
それに、そうすると国の役人も、立派な彫刻入りの台座名目で予算が確保できる。役人にとっては、できるだけ予算を使った方が手柄になるのだ。
もちろん、台座を造る事業者も、受注につながるので大喜びだ。そうして立派な彫刻を施した台座を納品する。