地球温暖化対策として日本では洋上風力発電を推進している。ある程度のCO2削減になることは確かだが、経済的に考えて日本にとって正しい選択なのかどうかは疑問が残る。大規模な計画が進む北海道に足を運び、その実態を見てきた。
(杉山 大志:キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)
設備能力は北海道の電力需要を大幅に上回るが…
北海道で大規模な洋上風力発電の計画が相次いでいる。北海道新聞(3月29日付)によると、既に発表された計画は、札幌市の海の玄関である石狩湾だけで1217基、出力にして合計1173万キロワットに達する。加えて291万キロワットの洋上風力も道南で計画されている。
これに対して、北海道の電力需要はといえば、真冬の寒いときのピークでも569万キロワットに過ぎない。通年の平均だとこの60.3%の343万キロワットしかない*1。
*1:「電力需給及び電力系統に関する概況 2022年度の実績」(電力広域的運営推進機関)
さて風力発電は風まかせである。通年での設備利用率は洋上のもっとも風の状況の良いところでも、せいぜい35%しかない。この意味は、たとえ1000万キロワットの風力発電設備があっても、通年では平均350万キロワットしか発電しない、ということだ。
もちろん風が弱ければ風力の発電量はゼロだ。だから、火力発電所や原子力発電所をなくすわけにはいかない。いま北海道電力が有する火力発電所は427万キロワットで、これが発電の主力になっている。ただし古くなった発電所も多い。
泊原子力発電所は207万キロワットと出力が大きいが、いまは停止中だ。再稼働すれば余裕ができるが、残念ながらもう10年以上も止まったままだ。その一方で千歳に誘致するラピダスの半導体工場だけでも100万キロワット近い電力消費になるかもしれないと言われる。ICT産業の電力需要などを考えると、将来にはもっと電力が必要になる。
他方で、強い風が吹けば、1000万キロワットの風力発電設備は、もちろん1000万キロワットの出力を出す。これは北海道では到底使いきれない。
そこで国の計画「広域連携計画のマスタープラン」では、北海道から本州へ600万キロワットの海底送電線を新設するという*2。既存の北海道と東北の送電線(北本連携線90万キロワット)の7倍の容量だ。