海外では動物ショーを禁止する動きも

 さて、昨今は動物福祉(アニマルウエルフェア)の観点から動物のショーを見直す動きが海外で広がりつつある。

 フランスでは2021年にイルカショーやサーカスでの野生動物出演禁止の法案が可決された。発効されれば数年後にはイルカショーやサーカスの動物芸ができなくなるという。

 確かに、動物のショーは動物の自発的行為ではないと言われればその通りだ。

冬の寒い日、子ザルのリキもオランウータンのジプシーを真似て布切れを身体に巻いた(写真:橋本 昇)
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 しかし、それを人間の傲慢と考えるか、人間と動物の愛情物語と考えるかで見方も変わってくるだろう。飼育員と動物の愛情の絆を取材した者としては、そんな思いを抱く。

 動物芸の元祖ともいえる“猿回し”。2匹の日本猿によって演じられる「金色夜叉」を道の片隅の人だかりに頭を突っ込んで見たのは小学生の時だった。以来、私は猿が大好きなのだ。

自分が映った鏡に驚き、疑い、悩み、怒る多摩動物園のチンパンジー(写真:橋本 昇)
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【橋本昇】
30年にわたり、フランスの写真通信社sygma(現在はgetty images)の契約フォトグラファーとして、国内の被災地や海外の内戦、難民を取材。著書に『内戦の地に生きる―フォトグラファーが見た「いのち」』(岩波ジュニア新書)がある。

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