飼育員と動物の信頼関係、そして根気の賜物
新年には書き初めの披露もあった。アシカの仲間のオタリアが喉をゴロゴロ鳴らしながら丸椅子に乗り、太い筆を口にくわえてゆっくりと卯年の卯の字を書き上げた。ひと書きしては「これでいい?」と念を押すように飼育員の方を向く姿が愛らしい。そして、書き上げると「どうだ」と言うように野太い声を一声あげた。
飼育員の女性は「もともと野生だったこの子をここまで訓練するのは忍耐と根気の連続でした。大勢の観客に慣れるのにも時間がかかりましたが、今は人気者です」と、育てた我が子に目を細めた。
人間と動物は古来より共存している。というか、日本昔話に登場する動物たちは人間の仲間だ。桃太郎、金太郎、かちかち山、どの話でも動物が生き生きと活躍する。
また、昔話には人間の姿に変身する動物も多く登場し、私たちは変身した動物による恩返し物語にも心を暖めてきた。さらに、平安時代に描かれた「鳥獣戯画」に登場する動物たちのなんともユーモラスな姿。日本人は動物を擬人化することで動物との仲間意識を育んできたのだ。


