そもそも「LRT」とは
そもそもLRTとは何であろうか。厳密な定義があるわけではないが、国土交通省では、「低床式車両(LRV)の活用や軌道・電停の改良による乗降の容易性、定時性、速達性、快適性などの面で優れた特徴を有する軌道系交通システムのこと」と定義している*1。路面電車の進化した形とも言えるが、いくつかの重要な点がある。
まず、乗降の容易性ということでは、地下鉄やモノレールと違い路上から乗り降りできるメリットに加え、車両技術の進歩がもたらした完全バリアフリーという点がある。今回開業したライトラインも、電車は乗降口にステップがない低床車で、お年寄りに優しい。開業間もない時期に乗ったところ、ベビーカーを押している家族や、車椅子の人もいたが、乗り降りはスムーズであった。
また、道路上を走るとはいえ、軌道に自動車が入らないようにしたり、場所によっては、通常の鉄道同様の専用軌道区間を設けたりすることで、定時性、速達性が確保される。ライトラインの場合もその点はしっかり守られており、交通量の激しい交差点では、高架線となっているところがある。その結果、バスではなかなか時間が読めないのに対し、LRTであれば安心して乗ることができる。
そして、快適性も、利用者を引き付ける点では重要である。かつての路面電車は、騒音が大きく揺れもひどかった。これに対し、LRTは、樹脂を用いた軌道を活用するなどして、きわめて静かな走行となっており、揺れも少ない。バスと違い、車両も大きいことから、ゆったりとした空間で移動できる。ライトラインもそうだが、窓も大きく、乗っていても街と一体感を感じることができる。もちろん、車両そのものもスタイリッシュで、街に溶け込んでいる。
このような特徴を持つLRTは、自家用車の普及に伴う渋滞、中心市街地の衰退、環境の悪化、高齢化の進展による引きこもりなどの解決策として、欧米を中心に1980年代から普及した。1978年以降でみると、新設のLRT(既存の路面電車の改良を除く)だけで、世界中に200都市を数える。
図1 世界の新設LRTの推移
開業前から市民を巻き込む
2000年以降、欧米のみならず、アジアでも増え続けるLRTであるが、日本では普及しなかった。それだけに、全線新設のライトラインに対する期待は大きい。LRTの特徴は先に述べたが、宇都宮市のライトラインは、それ以外にも欧米のLRTで見かけるしくみが備わっている。
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