路線バスの廃線が相次ぐなど、地方交通の衰退が顕著になっている。それらの解決策として、LRT(Light Rail Transit)やデマンド交通といった最新の交通手段、あるいは市町村主導での交通再編が可能になるなど、解決に向けた動きは出ている。
「地方の交通を復活させる手段は、少しずつ揃ってきていると感じます。しかし、交通の変革は大事業になり、多額の税金がかかります。反対意見により進まないことも多いでしょう。となると、その地域の交通がよみがえり、街に活気が溢れるかは『地域の住民の意思にかかっている』とも言えるのです」
このように話すのは、行政法をベースに地域交通を研究する國學院大學法学部の高橋信行教授。道路行政を軸に交通の変遷をたどってきた本連載、最終回の今回は地域交通の未来における「住民の役割」を考える。
【前回の記事】地方の負のスパイラル、宇都宮はLRTで逆転できるか(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/59092)
都市部でも行われている「交通の再編」
――前回までのお話で、地方を中心に交通が転換期にあることや、実際に行われている再編事業について伺いました。
高橋信行氏(以下、敬称略) 実は、再編を迫られているのは地方だけではありません。たとえば、これまでにお話しした「デマンド・バス」は、都市部にも取り入れられ始めています。
――都市部は公共交通も充実しており、不便がないイメージでした。どういったことでしょうか。
高橋 一例として紹介したいのが、東急田園都市線たまプラーザ駅(神奈川県横浜市)近くの住宅街で実験運行されたデマンド・バスです。
このエリア一帯は、1960~1970年代に急激な発展を遂げ、住宅街として多くの人が移り住んできました。結果、住民の高齢化が顕著になっています。同時代に移り住んできた人が多い郊外の住宅地も似たような傾向にあります。
さらにデマンド・バスを取り入れた背景に関係するのが、このエリアの地形です。たまプラーザ駅周辺は丘陵地帯で、ちょうど“谷底”のような場所に駅が立地しています。駅から家に帰る際、谷底から丘を登るルートになりやすいのです。高齢の方にとっては、徒歩での移動が厳しくなりますよね。