医師であり土木技師でもあった「哲学者」
12月は、平和を訴え続けアフガニスタンで多くの人々の命を救った中村哲医師の祥月である。2019年12月4日、アフガニスタン東部のジャララバード市内で何者かに銃撃され死亡した。
中村哲医師は、35年の長きにわたり、アフガニスタンとパキスタンで医療活動を行い、干ばつ被害に苦しむ人々の命を救うため、無謀と言われた用水路建設に乗り出した。戦乱がつづくなか、中村医師は現地住民の先頭に立って困難な土木工事に挑み、完成した用水路は、いま65万人もの人々の暮らしを支えている。
その生涯を振り返ると、偉業を成し遂げ得たうらには、中村医師の深い洞察にもとづく独特の哲学があったと思われる。アフガニスタン現地でながく中村医師の片腕となって活動してきたジア医師は、中村医師をこう評する。
「すばらしい医師であり優秀な土木エンジニアでしたが、それ以上に哲学者でした」
中村医師は、今の日本と日本人についても独自の見方で鋭い指摘をしてきた。一年を振り返る師走にあたり、中村医師の言葉をたどりつつ、これからの私たち日本人の生き方を考えてみたい。