TBS『日曜劇場 VIVANT』は今年最大のヒットドラマになった。全10話の平均視聴率は個人全体が9.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)。ほかのドラマの約3倍から5倍以上あった。なお、3年前からテレビ界もスポンサーも使っていない世帯視聴率の全話平均値も参考として記すと、14.2%だった。
9月17日の最終回で記録された個人全体は12.5%(世帯19.6%)。慶応高が107年ぶりに優勝した8月24日の「全国高校野球選手権決勝」(NHK)の個人全体の10.7%(世帯19.3%)を超えた。面白いドラマなら、スポーツのビッグマッチより観られることが分かった。逆に言うと、これまでのドラマにはつまらないものが多すぎたのだ。
なぜ、ここまで観る側を惹き付けたのか。解説したい。
専門家の意見も割れた「別班は実在するか否か」
まずストーリーが魅力的だった。ドラマも映画も大切なのは「1に脚本、2に俳優、3に演出」というのが古くからの常識。『VIVANT』も例外ではない。自衛隊の非公然諜報組織「別班」を巡るストーリーにしたのが成功の原点だった。
視聴者になじみのなかった別班は軍事ジャーナリストの間ですら「ある」「ない」と意見が割れた。また、防衛省は「過去も現在もない」としているが、石破茂元防衛相(66)は「存在している」と語った(「週刊文春」2023年9月14日号)。
無論、活動内容もベールに包まれていた。だからこそドラマの題材には絶好だった。月並みなお仕事ドラマとは次元が全く違い、観る側の好奇心を掻き立てた。別班を題材に選び、原作を書いた福澤克雄監督(59)の作戦勝ちだ。