先の調査結果とあわせるとこうなる。日本人は貧しい人や困っている人を自分で助けないばかりか、公の力で助けることにも反対する人が4割以上いる。冷酷きわまりない国民ではないか。
「やさしさ」があふれる社会に住みながら
日本では近年、「やさしさ」が流行り言葉のように濫用されている。「お肌にやさしい」、「地球にやさしい」、「お体にも環境にもやさしい」……。しかし、自分たちは平和を愛するやさしい国民であるという自己像は、国際比較することによって、こなごなに打ち砕かれる。
この日本中にあふれる「やさしさ」を中村医師はまがいものだとするどく指摘する。
「『やさしさ』は社会的な風潮となった。残酷な表現を子供の世界から奪い取り、童話の筋まで書きかえる。差別をなくすと称して、人を罵倒する言葉を禁止する。チャンバラは廃れ、ケンカも少なくなった。大人の世界では、差別語摘発が始まり、自然保護、動物愛護が叫ばれた。」*2
中村医師が今の日本に見るのは、「精神性」と「道徳」の崩壊である。
「極端な戦後教育の転換は、全て古いものを封建的という烙印を押して一掃し、日本人から精神性を奪い取った。温故知新というが、日本は古い道徳に代わる何ものも準備せず、やたら古い権威の分析をしたり、仮面をはぐのみであった。そのつけは今来ている」*3