名簿の再利用か

 現時点では、筆者の憶測の域を出ないものの、あえて私見を述べさせていただくと、今回の続発する強盗事件は、半グレを操っている首魁が、既に道具屋(各種犯罪の道具を商売とする者)から買った名簿に掲載されている人たちを、何らかの理由で特殊詐欺の対象から外し、強盗のターゲットにしたものではないかと考えている。

 今回の強盗事件――昔でいう「急ぎ働き」をして、数日間の間に複数の強盗を敢行していることは、警察の捜査かく乱を念頭に置いている可能性がある。加えて、金を得るためには手段を選ばずという犯行から、闇バイトの末端要員軽視の姿勢が見て取れる。

(写真:PantherMedia/イメージマート)

 この場合、被害者の方々は、災難としか言いようがない。しかし、闇バイトで集められ、軽い気持ちで強盗団に加わった無分別な若者も悲惨としか言いようがない。

 このような犯罪に加担したら、長い懲役に行かなくてはならない上に、若くして前科者の烙印を押されてしまい、真っ当な社会生活を送ることが難しくなる。さらに、半グレの一員として犯罪に従事すると、出所後も銀行口座は開設できないので、各種契約も難しくなる。まったく割に合わない。

使い捨てにされる者はやがて「無敵の人」に

 特殊詐欺事件でも強盗事件でも首魁は逮捕されず、実行犯のみが逮捕される。彼らは、首魁が誰であるかはもちろん、共犯者の名前すらも知らされていない。だから、彼らの調査票(就労支援時に観察所から預かる保護観察対象者の成育歴や事件の概要などを記した記録)を見ると、「山田太郎は、氏名不詳の者A、氏名不詳の者Bと共謀し……」という書き方で、事件概要が記されている。

 先述したように、特殊詐欺などで逮捕されると、一発実刑で刑事施設に収容される。大学生なら退学になる。会社員なら懲戒免職の可能性を否定できない。さらに、金融機関などのデータベースに反社登録されることで、出所後も銀行口座は開設できないから、各種契約も難しくなり、更生など望むべくもない。

 そうすると、各種犯罪の首魁の思うつぼなのである。使い捨てにしたにもかかわらず、彼らは刑期を終えると、再び裏社会の仕事に戻ってくるからだ。