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JBpressで掲載した人気記事から、もう一度読みたい記事を選びました。(初出:2023年1月25日)※内容は掲載当時のものです。

(廣末登・ノンフィクション作家)

 関東で強盗事件が続発している。東京・狛江市では、90歳の女性が殺害された。単なる強盗ではなく、凶悪な強盗殺人事件が白昼に行われたことは、巷間を不安に陥れた。

 被害者の高齢女性は、結束バンドで縛られた上に殴打を加えられ、多発性外傷により亡くなっている。一連の事件は、既に逮捕された容疑者から、「闇バイト」で招集された半グレの仕業であるとの見方が強い。

 その見方はおそらく正しい。

 筆者は、2003年から今日まで、反社会的勢力の研究を続けてきた。さらに、2018年から2年間、福岡県更生保護就労支援所長を務め、年間100人を超える保護観察対象者の就労支援を行った。現在も保護司として活動しており、半グレと呼ばれる反社会的勢力の構成員であった者を、数多く取材した経験を持つ。

 筆者は、2021年2月の時点で、『だからヤクザを辞められない――裏社会メルトダウン』(新潮新書)にて、半グレを特性ごとに分類し、その犯罪の傾向につき警鐘を鳴らしている。

少し前まで半グレ強盗は「共食い」だった

 今回のような事件の発生は、筆者としては想定できたものである。

 実は今回頻発しているような凶悪事件は、もともとは、被害届が出せないような相手をターゲットとして行われていた。それはたとえば、闇金や裏社会の人間が違法な手段で得た金品を奪う、というようなものだ。そうした金は、強奪しても被害届が出てこない。

 かつて大きな事件で世間を騒がせた人物の証言を紹介する。

<裏の社会は、弱肉強食の世界になりつつありますが、都会では、誰がそうした『裏金』を持っているかリストアップして、タタキ(強盗)でぶん捕るなんてこともあるようです。だから、半グレは、自分のシノギや儲けを容易に他人に喋ると、大ごとします(厄介なことになります)。知らないうちに、自分が(別の半グレの)ターゲットになるわけですから。要は、身内同士で食らうことがシノギになり、儲かるということです。さらに、警察に被害届を出すわけにいかないカネですから、ぶん捕っても安全です>(『だからヤクザを辞められない』127頁)

 このような共食い的なタタキ(強盗)のターゲットが、一般人にまで拡大された結果起こったのが今回の事件である。