三菱デリカミニAWD三菱デリカミニAWD(群馬・八木沢ダムにて/筆者撮影)

 今年5月に発売された三菱自動車の軽スーパーハイトワゴン「デリカミニ」。それまでの「eKクロス スペース」を化粧直ししたマイナーチェンジ的新モデルだが、好調な販売を続けている。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏が約800kmのテストドライブを行い、性能や“乗り味”を検証した。(JBpress編集部)

>>三菱自動車「デリカミニ」の全貌(写真17点)

ベース車「eKクロス スペース」からの変更は最小限

 2023年5月に販売を開始した三菱自動車の「デリカミニ」は、フロントフェイスを中心に「eKクロス スペース」から大胆なリメイクを図ったエクステリアが好評を博し、さらにそのフロントフェイスをデフォルメした犬のキャラクター「デリ丸」が人気となるなど話題を集めた。

 日本カー・オブ・ザ・イヤー2023─2024の最終選考では、部門賞のデザイン・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞。三菱自動車の軽自動車事業は長らく低迷期にあったが、このデリカミニの登場は久々に明るい材料といえる。

 前述したように、このデリカミニは2020年に投入されたeKクロス スペースをベースに作られ、同モデルに置き換えられたという経緯がある。イメージがガラリと変わったためとてもそうは見えないが、実は変更は最小限にとどめている。

eKクロス スペースデリカミニの原型となったeKクロス スペース(筆者撮影)

 ボディの金属部分は切り欠きや内部構造を含め、eKクロス スペースから変更なし。内装も素材や色などは変わったが、デザインの変更はなし。ヘッドランプ、グリル、バンパー、前後の「DELICA」のロゴ入りガーニッシュ等、簡単に変更できる部分だけに手を入れて作り上げたモデルなのだ。メカニズム面の変更はなく、AWD(四輪駆動)のみタイヤサイズのワンサイズアップ、サスペンションのチューニング変更を受けている。

三菱デリカミニAWDのフロントフェイス三菱デリカミニAWDのフロントフェイス。原型であるeKクロス スペースからガラリと装いを変えた(筆者撮影)
フロントバンパーに「DELICA」のロゴ(筆者撮影)
リアガーニッシュにも「DELICA」のロゴ。本家デリカD:5のイメージをほうふつとさせる(筆者撮影)

「○○ミニ」と名づけられた三菱自動車のクルマといえば、往年のクロスカントリー4×4「パジェロミニ」が思い浮かぶ。軽自動車ではあるがラダーフレームとパートタイムAWDシステムを持つ本格オフロードモデル。本家「パジェロ」の名を継承するだけのことはあると思わされるクルマだった。

 デリカミニにも本家本元はある。三菱自動車伝統のオフロードミニバン「デリカ」だ。第2世代「デリカスターワゴン」のモデルライフ途中、1982年にミニバンとしては初めてAWDシステムを搭載。その後「デリカスペースギア」、現行の「デリカD:5」と、一貫して悪路走行をモノともしないネイチャーギアというイメージを保ってきた。三菱自動車にとってはパジェロ、「ランサーエボリューション」に劣らぬ、そして唯一現存するブランドパワー強化の武器だ。

ミニバンでありながら高いオフロード走破力を持つことで知られる本家デリカD:5。デリカミニはその悠然とした乗り味の一部が移植されたようなフィールだった(筆者撮影)

 デリカミニは元のeKクロス スペースとメカニズムは同じだが、AWDは車輪の大径化で車高が10mmアップしており、クルマ自体はモノコックボディの軽スーパーハイトワゴンそのものだ。パジェロミニのように本格オフローダーとしての構造を持っているわけではない。そのデリカミニが果たしてどのくらい“デリカしている”のか。800kmあまりロードテストを行って商品性をチェックしてみた。

タイヤは165/50R15から165/60R15サイズに大径化された。車高1cmアップの効果を生む(筆者撮影)

 ロードテスト車はターボエンジンの上級グレード「T Premium」で、駆動方式はタイヤサイズやサスペンションチューニングを変えたというAWD。試乗ルートは東京を起点とし、群馬北方の八木沢ダム、奥利根、金精峠などを巡りつつ栃木の日光、宇都宮と抜けて東京に戻る約470kmの北関東ワンデードライブと首都圏走行の計814.7km(1~2名乗車、天候はおおむね良好、エアコンAUTO)。

内装はeKクロス スペースと同じ。ダッシュボードはアウトドア使用時の清掃の利便性重視でソフトパッドでなくハードプラスチックに(筆者撮影)