今年5月に発売された三菱自動車の軽スーパーハイトワゴン「デリカミニ」。それまでの「eKクロス スペース」を化粧直ししたマイナーチェンジ的新モデルだが、好調な販売を続けている。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏が約800kmのテストドライブを行い、性能や“乗り味”を検証した。(JBpress編集部)
ベース車「eKクロス スペース」からの変更は最小限
2023年5月に販売を開始した三菱自動車の「デリカミニ」は、フロントフェイスを中心に「eKクロス スペース」から大胆なリメイクを図ったエクステリアが好評を博し、さらにそのフロントフェイスをデフォルメした犬のキャラクター「デリ丸」が人気となるなど話題を集めた。
日本カー・オブ・ザ・イヤー2023─2024の最終選考では、部門賞のデザイン・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞。三菱自動車の軽自動車事業は長らく低迷期にあったが、このデリカミニの登場は久々に明るい材料といえる。
前述したように、このデリカミニは2020年に投入されたeKクロス スペースをベースに作られ、同モデルに置き換えられたという経緯がある。イメージがガラリと変わったためとてもそうは見えないが、実は変更は最小限にとどめている。
ボディの金属部分は切り欠きや内部構造を含め、eKクロス スペースから変更なし。内装も素材や色などは変わったが、デザインの変更はなし。ヘッドランプ、グリル、バンパー、前後の「DELICA」のロゴ入りガーニッシュ等、簡単に変更できる部分だけに手を入れて作り上げたモデルなのだ。メカニズム面の変更はなく、AWD(四輪駆動)のみタイヤサイズのワンサイズアップ、サスペンションのチューニング変更を受けている。
「○○ミニ」と名づけられた三菱自動車のクルマといえば、往年のクロスカントリー4×4「パジェロミニ」が思い浮かぶ。軽自動車ではあるがラダーフレームとパートタイムAWDシステムを持つ本格オフロードモデル。本家「パジェロ」の名を継承するだけのことはあると思わされるクルマだった。
デリカミニにも本家本元はある。三菱自動車伝統のオフロードミニバン「デリカ」だ。第2世代「デリカスターワゴン」のモデルライフ途中、1982年にミニバンとしては初めてAWDシステムを搭載。その後「デリカスペースギア」、現行の「デリカD:5」と、一貫して悪路走行をモノともしないネイチャーギアというイメージを保ってきた。三菱自動車にとってはパジェロ、「ランサーエボリューション」に劣らぬ、そして唯一現存するブランドパワー強化の武器だ。
デリカミニは元のeKクロス スペースとメカニズムは同じだが、AWDは車輪の大径化で車高が10mmアップしており、クルマ自体はモノコックボディの軽スーパーハイトワゴンそのものだ。パジェロミニのように本格オフローダーとしての構造を持っているわけではない。そのデリカミニが果たしてどのくらい“デリカしている”のか。800kmあまりロードテストを行って商品性をチェックしてみた。
ロードテスト車はターボエンジンの上級グレード「T Premium」で、駆動方式はタイヤサイズやサスペンションチューニングを変えたというAWD。試乗ルートは東京を起点とし、群馬北方の八木沢ダム、奥利根、金精峠などを巡りつつ栃木の日光、宇都宮と抜けて東京に戻る約470kmの北関東ワンデードライブと首都圏走行の計814.7km(1~2名乗車、天候はおおむね良好、エアコンAUTO)。