現在は立ち入りできない状態に

 その後どうなったのか。次の写真は2021年11月に、現地で撮影したものだ。

 函嶺洞門へ続いていた道路周辺は網のフェンスで囲まれていて、中に立ち入ることはできない。人も車も通らなくなった道路は、舗装を突き抜けて背の高い雑草が生えていた。

フェンス越しに函嶺洞門の小田原側を撮影フェンス越しに函嶺洞門の小田原側を撮影

 2015年からは、箱根駅伝の選手も新しいバイパスを走るようになった。コースが20m長くなったので、2014年以前の記録は参考記録扱いとなってしまったが、チェックポイントの場所と呼び名「函嶺洞門」はその後も引き継がれている。

使われなくなった函嶺洞門前を力走する青学大の神野大地選手(2016年1月2日、代表撮影、写真:時事通信社)使われなくなった函嶺洞門前を力走する青学大の神野大地選手(2016年1月2日、代表撮影、写真:時事通信社)

 今回の一般公開は、函嶺洞門の堂々とした佇まいを味わう絶好のチャンスだ。通行止めになってちょうど10年。その間にどれぐらいの経年変化があっただろうか? 機会があれば公開期間中に足を運んで確かめてほしい。

 ところで、この一般公開は1回限りで終わってしまうのだろうか。

 うれしいことに、そうではなさそうだ。公開初日の2日に現地に行って、実際の函嶺洞門を味わった。そこで聞いたことによると、まだ追加の補修工事が必要なのだが、継続的な公開も検討中だという。詳しくはこちら。
箱根駅伝選手たちだけが味わえた函嶺洞門、10年の眠りから覚め人々が行き交う

牧村あきこ
まきむら あきこ フォトライター。千葉大学薬学部卒。プログラミングなどIT系フィールドに長年籍を置き、当時は日経BP社月刊誌にて多くの記事を執筆。現在は廃線や水場を求めて現場取材を中心に行い、「Discover Doboku 日本の土木再発見」などに寄稿。コアな一人旅にフォーカスしたサイト「そろっぽ!」を運営中。

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