第4部 ロシア国家予算案概観
4-1. 2022年通期/23年1~10月度ロシア国家予算案実績と24年予算原案概観:
ロシア下院は11月17日、下院第三読会にて2024年国家予算原案を審議・採択しました。
今後、上院にて承認後、大統領の署名をもって、予算原案は成立・発効予定です。
ご参考までに、2022年の期首予算案と実績、23年期首予算案と1~10月度実績、および24年予算原案概要は以下の通りです。

ロシアの2022年国家予算は期首予算案1.33兆ルーブルの黒字案でした。
期首想定油価バレル$62.2に対し実績$76.1ですから、本来ならば期首黒字案以上の大幅黒字になるはずが大幅赤字となりました。
露財務省は2021年までは各支出項目の経費が明記されていましたが、22年1月から支出総額のみで、支出細目は白紙となりました。
ゆえに赤字の詳細は不明ですが、これが何を意味するかは説明不要と思います。
4-2. ロシア国家予算案遂行状況概観 (2023年1~10月度):
露財務省は今年1~10月度の露国家予算案遂行状況を以下の通り発表。2023年の予算案想定油価$70.1に対し、1~10月度ウラル原油平均油価は$61.8になりました(現在1ルーブル約1.6円)。
油価が上昇したので、今年上半期実績(油価$52.2/赤字2.6兆ルーブル)と比較して露財政状況が改善していることが分かります。
換言すれば、露財政は油価に依存していることを意味します。

4-3. 2024年ロシア国家予算原案と治安・国防費:
本稿では2024年露予算原案の治安・国防費を概観します。
2024年の下記予算原案を見れば一目瞭然ですが、ロシア経済は既に実質戦争経済に突入しています。
2024年の期首予算原案では、23年期首予算案と比較して国防費は倍増(24年歳出案の3割)となりました。
国防費に治安関連費用を加えると国家歳出案の約4割が治安・国防費となりますが、露大統領府の秘密資金等も勘案すれば、実質国家予算歳出案の半分が国防・治安・情報関連費になるものと推測されます。
2022年から個別支出項目は発表禁止となり項目別歳出実績は不明ですが、戦争経済は確実にロシア国民の生活を蝕んでいると言えましょう。
