プロローグ/金の切れ目が戦争の切れ目
最近ようやく、日系マスコミでも「ロシア財政悪化問題」が脚光を浴びるようになりました。
筆者は昨(2022)年2月24日のロシア軍によるウクライナ侵攻作戦発動以降、一貫して油価と戦費問題に言及してきましたので、今回も油価(ウラル原油)とロシア財政(=戦費問題)に言及したいと思います。
この意味で本稿は実質、昨年12月7日に発表した拙稿『疲弊著しいロシア経済』と今年1月16日の『2023年油価が示すプーチンの末路』の続編になります。
(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/73005)
(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/73518)
ロシア経済は油価依存型経済構造です。油価が上昇すれば経済は上昇し、逆もまた真なりです。
昨年のロシア国家予算案想定油価はバレル$62.2でしたが、結果として実績は$76.1になりました。
ですからロシア経済は油価上昇を受けて右肩上がりになるはずが、結果は右肩下がりになりました。
ロシアGDP(国内総生産)もプラス成長になるはずがマイナスとなり、ロシア国民福祉基金資産残高も大幅増加となるはずが大幅減少になりました。
原因はもちろんウクライナ戦費です。
今年2023年の国家予算案想定油価は$70.1ですが、1月度油価(ウラル原油)は$49.5になりました。
ゆえに、問題は今年2023年です。
今年、ロシア経済弱体化と財政赤字問題(=戦費枯渇問題)が大きくクローズアップされることになるでしょう。
既に、今年1月度の財政赤字幅拡大が露マスコミ各紙に大きく報じられるようになりました。
ロシア軍は2022年2月24日にウクライナ全面侵攻開始。この原稿を書いている2月10日はV.プーチン大統領(70歳)によるウクライナ侵略戦争勃発から352日目となり、ウクライナ戦争は既に12か月目に入っています。
もうすぐ丸一年を迎え、2月24日からウクライナ戦争は2年目に突入します。
本来ならば、ロシア軍の侵攻数日後にはウクライナの首都キエフ(キーウ)は制圧され、ロシア軍は解放軍としてウクライナ国民から歓呼の声で迎えられ、ウクライナのV.ゼレンスキー大統領は追放・拘束され、V.ヤヌコービッチ元大統領を新大統領とする親露派傀儡政権が誕生する予定でした。
ゆえに、ウクライナ侵略戦争の長期化・泥沼化はV.プーチン大統領にとり大きな誤算となり、戦況悪化と正比例するかのごとく、ロシア政治に内包されていた矛盾が次々と顕在化・表面化してきました。
祖国防衛戦争を標榜する現在のプーチン大統領の姿は、大東亜共栄圏を標榜する太平洋戦争末期における旧日本軍大本営末期の姿と瓜二つと言えましょう。
戦況が有利になったので、プーチン大統領は2月21日に大統領年次教書を発表する由。
何か勘違いしているようですが、換言すれば、それだけプーチン大統領は追い詰められているとも言えます。
継戦能力の原動力は経済力と資金力(戦費)です。ロシア経済は既に弱体化しており、戦費は枯渇しつつあります。
筆者は開戦当初より、金の切れ目が縁(戦争)の切れ目と主張してきました。
筆者は今春、ウクライナ東南部で大規模な戦車戦が展開され、その後戦争の帰趨が見えてくるものと予測します。
本稿の結論を先に書きます。
今回の戦争で一番困惑しているのは、実はプーチン大統領その人と筆者は推測します。
短期電撃作戦のはずが長期戦・消耗戦となり、その結果、ウクライナ戦争はロシア経済の衰退をもたらし、プーチンの墓標になるでしょう。