第3部 ロシア国庫税収概観

 ロシアではウラル原油の油価が国家予算案策定の基礎になっており、国庫歳入はウラル原油の油価に依存しています。

 ロシア経済は「油上の楼閣経済」にて、ロシア財政は油価(ウラル原油)依存型構造です。

 下記グラフをご覧ください。ロシア国庫税収は油価(ウラル原油)に依存していることが一目瞭然です。

 なお、この場合の石油・ガス関連税収とは2018年までは炭化水素資源採取税(石油・ガス鉱区にかかる税金)と輸出関税のみでした(註:天然ガスは気体としてのPLガスのみ/液化天然ガスLNGはゼロ)。

 2019年からはロシア国内の石油精製業者に賦課される税収も加わりましたが、補助金対象にもなっており、現在でも石油・ガス関連税収の太宗は炭化水素資源採取税です。

 露財務省は毎月、石油・ガス関連税収と非石油・ガス関連月次税収を発表しています。

 プーチン大統領は2000年5月にロシアの新大統領に就任したので、ここでは2000年から2022年までの油価と国家予算案実績と2023年1~10月度実績、および現在審議中の2024年国庫予算原案を概観したいと思います。

出所:露財務省統計資料より筆者作成

 プーチン新大統領誕生当時、ロシアの国家予算案に占める石油・ガス関連税収は約2割でした。

 ところが、プーチン大統領就任後、油価は徐々に上昇開始。

 ウラル原油がバレル$100を超えた2011年から数年間は、ロシアの国家予算案に占める石油・ガス関連税収は上記2種類の税金のみで50%を超えていました。

 2022年の国家予算案想定油価はバレル$62.2(石油・ガス関連税収シェア38.1%)、実績$76.1(同41.6%)。2023年は予算案想定油価$70.1(同34.2%)に対し、1~10月度実績$61.8(同31.2%)になりました。

 露ウラル原油は今年10月下旬から下落傾向に入りました。

 ゆえに、今年通期ではロシアの国家予算案に占める石油・ガス関連税収は今後減少することが予見されます。

 付言すれば、天然ガス輸出の場合、PLガス輸出はFOB(Free on Board=本船渡し/PLガスの場合、国境渡し)輸出金額の50%が輸出関税(2022年までは30%)、LNG(液化天然ガス)輸出は関税ゼロです。