日本は32年間連続で世界一の純資産大国。「国民金融資産」は約2000兆円。

 ところが、国民金融資産のうち、革新的な技術やビジネスモデルを持つ新しい「成長企業投資」を担う「ベンチャーキャピタル(VC)」に投資しているのは、日本全体で年間わずか5000億円程度。

 国民金融資産の4000分の1の0.025%にすぎない。

メインバンクに代わるシステムが不可欠

「GAFAMができたばかりの時に投資してたら、今頃は天文学的な投資リターンになってたのにな」と思ったことはないだろうか?

 それを実行してきたのが米国の「目利き力のあるVC」だ。

 裏返せば、生まれてすぐに「目利き力のあるVC」が巨額投資をしてくれたからこそGAFAMは世界市場を制覇できた。

 そして、成長投資をする「目利き力のあるVC」に、年金や保険など「米国の国民金融資産」が巨額の資金を提供したしたからこそ、巨大な投資リターンが米国の国民所得を押し上げてきた。

 世界最大の赤字国米国のVC投資は年間50兆円。世界最大の対外純資産国日本は年間5000億円。米国の100分の1。

 いくら「成長戦略」「成長への第3の矢」だと吹聴しようと「失われた30年」で、一人当たり国民所得でシンガポールに抜かれたのはおろか、韓国にまで迫られている。日本は相対的に貧しくなった。

 新しい成長企業に投資しない日本が、経済成長で米国に勝てるわけがない。

 だが、日本のVCは、GAMFAMを発掘して最初から投資した米国のVCのように「育てる力」を持っている「目利き力のあるVC」なのだろうか?

 答えは「ほとんどがNO」だ。

 日本のVCの各個人の能力の問題ではない。日本人は優秀である。日本のVCには「革命的飛躍」が必要だ。

 1980年代、日本が「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われ、日本株が時価総額で世界一だった頃、世界を制した日本企業を金融面で育て上げたのは、日本独特の「メインバンク・システム」だった。

 しかし、日本の「メインバンク・システム」は、バブルとその崩壊を引き起こした銀行の「オウンゴール」と、「BIS規制」の導入という日米両国政府による「力学」によって、1992年から人為的に解体された。

 それ以来日本には「成長企業投資」を強力に進める「金融システム」は存在しない。

 この問題は「年金運用改革」なくして解決しないが、「年金運用改革」だけでは解決しない。

 担い手である日本の「VCの組織の根本的あり方」に「革命的飛躍」が必要なのだ。

 日本のVCの「革命的飛躍」を果たす最短距離にあるのは、これから日本に誕生する「21世紀型メインバンク・システム」である。

「21世紀型メインバンク・システム」を引っさげた新しい金融機関が日本に誕生する時に、日本の「年金運用改革」とパートナーとなり、日本の企業と経済をダイナミックにポジティブにインクルーシブに全国的に革新して、国民も企業も政府も豊かに成長する新しい日本が誕生する。

 過去のコンテクストを理解すれば、今が分かる。

 今が分かれば、未来が分かり、これからどうすべきかが見えてくる。

 次回は日本の「成長企業投資」について、過去・現在・未来のバースベクティフを解説しよう。