パクスアメリカーナの礎を築いたT型フォード

 米国内の分断が、高みに昇りすぎた米国株の大暴落からの大恐慌を誘発する。世界の主要国の分断が、米国発の大恐慌を世界に広げる。

 そして、「保護主義」が世界大恐慌を「世界大戦」へと導く。

 これまで人類が幾何級数的に加速してきた「地球の不足」が、世界戦争を長期化させ深刻なものにする。

 いまの「世界システム」は崩壊する。新しい世界システムの誕生と一応の完成には2050年までかかるだろう。

アメリカファーストとは保護主義

「アメリカファースト」とは「保護主義」である。

 来年の米大統領選挙を戦う予定のジョー・バイデン現大統領とドナルド・トランプ前大統領は「アメリカファースト」を掲げる点では一致している。

 アメリカファーストとは「保護主義」であり、外国に対する差別的な貿易政策と国内産業の保護を意味する。

 1990年代からの米国が「米中経済同盟」をグローバリゼーションの中心に置いて「ジャパンアズナンバーワン」を打破し、そのおかげで体制の違う中国が世界第2位の経済大国かつ軍事大国となった。

 中国製品が米国製品に取って代わり、「アメリカンドリーム」の中心であった米国内陸部の工場を閉鎖して地域経済を崩壊させた。

 リーマンショックがさらに米国民を分断して中国への怒りを増幅し、トランプ氏が大統領になってからの米国が保護主義に走ることは、第1次世界大戦直後に次の世界大戦の到来を予測したケインズ流の言い方をすれば、「当然の帰結」であった。

 アメリカファーストとは、世界から米国への求心力の放棄を意味する。

 そして、第2次世界大戦後の世界をここまで平和に保ってきた「パクスアメリカーナ」米国のもたらす世界の平和と繁栄の終わりを意味する。

 アメリカファーストにより、第2次世界大戦後の世界での米国への求心力の源泉であり、日本のように資源のない国が成長できる源泉であるがゆえに、世界各国から米国への権威と尊敬を生んだ「自由貿易原則」を米国は放棄することを宣言した。

「保護主義」をトランプ、バイデン、2代の政権がスタートしたのだ。