所信表明演説をする高市早苗首相(10月24日、写真:つのだよしお/アフロ)

高市首相の「成長宣言」と政策ミックス欠如

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 高市早苗首相は就任後初の施政方針演説で、「日本を本気で好景気に導く」と宣言した。

 しかし、その政策内容を見る限り、現状のままでは成長の実現は不可能である。

 最大の理由は、持続的な経済成長をもたらすための政策ミックスが存在しないという点だ。

 過去30年間で日本を大きく引き離した米国や中国の成長の源泉は何か。GAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)やアリババを成長させたのは何か。

 その答えは明白である。両国の成長エンジンは「ベンチャーキャピタル(VC)」にある。

成長の源泉:VCという投資機能

 では、ベンチャーキャピタルとは何か。そして銀行との違いはどこにあるのか。

 ベンチャーキャピタルとは、技術がまだ完全に商品化されていない段階、工場も売り上げも利益もない段階で、巨額の資金を供給する投資家である。

 技術の芽が確かであれば、ベンチャーキャピタルは資金を投じてその技術を実証させ、工場をつくり、製品化を進め、企業を成長させ、上場まで導く。

 つまり、「技術を資本に変える仕組み」がベンチャーキャピタルである。

 そして、「巨大機関投資家」がベンチャーキャピタルに巨額の資金を提供する。

 一方、日本のベンチャーキャピタルの多くはこの機能を十分に持っていない。日本の「巨大機関投資家」がベンチャーキャピタルに巨額の資金を提供しないからだ。

 勢い、投資対象が資金需要の少ないアプリ開発など、ごく一部の分野に限定されており、技術段階から巨額のリスクマネーを投入する仕組みがほとんど存在しない。

 かつての日本の高度成長期には、この役割を銀行が担っていた。

 まだ工場もなく、売り上げも利益もない段階で、銀行がリスクを取り、資金を提供し、株式を買い、経営を支えた。

 トヨタ自動車やソニーもそのおかげで成長した。それが日本のメインバンクシステムであり、国家の成長エンジンであった。

 しかし、1992年のBIS規制(​BIS=国際決済銀行が定めた自己資本比率規制)導入以降、銀行はその機能を失った。

 銀行は担保を取り、売り上げと利益が確定してからでなければ資金を出さない。

 この構造の中では、企業は銀行を頼って成長することができず、「成長の初期段階にお金が出ない国」になってしまった。

 したがって、1992年にBIS規制を採用した世界の中では、ベンチャーキャピタルという投資機能を持たない国は、成長できない

 ここが日本経済の決定的な弱点である。