私は常に悲観論者なのではない。
リーマンショックから6か月後の2009年3月、米国でも日本でも「大恐慌」の襲来を予言する本が売れていた頃に、「日本復活の最終シナリオ 太陽経済を主導せよ」(朝日新聞出版)を出版した。
その第1章に「戦前型大恐慌が起きない理由」を説明した。
当時の私が「リーマンショックから戦前型大恐慌が起きない」と正しく予言した理由は2つあった。
一つには、当時の米国ではリーマンショックに対する「巨大災害対応措置」が迅速に、しかも党派を超えた「ワンチーム」で行われたからだ。
具体的には、リーマンショックが起きた時のブッシュ(子)政権において、銀行預金と金融機関を保護して「金融恐慌」を防ぐための措置が取られた。
とりわけ、戦前の大恐慌の研究者として2022年にはノーベル賞を受賞した、当時のベン・バーナンキFRB議長が、金融政策のトップとして、天災と同じく初動対応が最重要の大規模金融崩壊の危機に直面した時に、リーマンショックの震源地であった政府機関FNMAファニメイや巨大保険グループAIGの救済などの瞬時の対応措置を矢継ぎ早に取った。
そして、かつて私の上司でもあった、ゴールドマン・サックスの元会長で金融機関のトップをよく知る当時のヘンリー・ポールソン財務長官が、次々と破綻していくメリルリンチなどの金融機関を、生き残る金融機関にこれまた瞬時に合併させていくなどして、破綻の連鎖を防いだ。
議会もこうした金融の巨大災害対応措置を超党派で支持した。
米国の戦後最大の経済危機が大恐慌に繋がるのを米国の政権執行部と議会が「ワンチーム」で阻止した。
2つ目は、世界の主要国が「体制や地域の違いを超えて」協力して、米国発のリーマンショックが世界の金融と経済に波及することを防ぎ、また、震源地である米国経済の立ち直りを全面支援したからだ。
こうした国際協力は、2001年に同じブッシュ(子)政権当時に起きた米国への「同時多発テロ」に対してロシア、中国、日米欧の主要国が体制の違いを超え、一致して同時多発テロを受けた米国を支援したことを彷彿させた。
とりわけ、米中両国が協力して危機の拡大を迅速に防いだ。