岸田文雄首相岸田文雄首相(写真:つのだよしお/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 臨時国会が始まり、与野党の論戦が続いているが、岸田首相が執着する「減税」が話題の中心となっている。10月のマスコミ各社の世論調査では、内閣支持率は軒並み「過去最低」を記録しており、SNS上では岸田首相は「増税メガネ」と揶揄されており、それを気にしたのか、経済対策の中心として減税や給付金支給を前面に打ち出したようである。

 しかし、日本経済は1990年代初めのバブル崩壊から低成長が続いており、「失われた30年」になろうとしている。

GDPでドイツに抜かれ、3位から4位に転落

 IMFの予測によると、2023年の日本の名目GDPは、ドイツに抜かれて3位から4位に転落するという。ドルベースの数字なので、円安、さらにドイツの高い物価上昇率も影響を考慮する必要があるが、日本の経済力の長期低落傾向の表れでもある。

 具体的には、日本は前年比0.2%減の4兆2308億ドル(約633兆円)で、ドイツは8.4%増の4兆4298億ドルである。1位のアメリカは26兆9496億ドル、2位の中国は17兆7009億ドルとなっている。

「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と激賞された日本は輸出攻勢により、日米経済摩擦を引き起こし、1985年にはプラザ合意を迫られ、急速な円高に方向転換させられた。この1985年の名目GDP世界ランキングを見てみると、1位がアメリカで4兆3390億ドル、2位が日本で1兆4274億ドル、3位がドイツで6610億ドル、4位がフランスで5576億ドル、5位がイギリスで5372億ドルであり、中国は8位で3101億ドルであった。

 それから約40年が経つが、その間にアメリカはGDPが6倍以上に、中国は5倍以上になっているが、日本は3倍にしかなっていない。