仲本は現役のタレントであり、ドラマや映画にも出演していたからイメージは非常に大事だ。キャスティングをするときに「仲本はゴミ屋敷で暮らしているからパスしよう」となることだってあり得るだろう。そのことを仲本も頭に入れていたことは間違いないだろうから自分のイメージアップのためにツイッターを利用しようと思ったのだろう。
誘導された「娘の告白」
絵美の自宅のランチを終えて15日土曜日の夜になって、やっと仲本は娘のKと連絡をとることができた。携帯電話のスピーカーフォン機能を使っていたので話の内容は純歌も聞くことができた。
「お前が新潮にチクったのか?」
仲本さんが静かに訊いた。
「え、何のこと?」
Kの反応は予想外なものだった。Kによれば、発売1週間ほど前に週刊新潮編集部から携帯に電話があって、一方的に質問されたのだという。
「私の携帯番号をどうして知っているのかまず不思議だったけど、その理由を言わず、〈お父さんが純歌さんの世話も受けずに自宅はゴミ屋敷のようになっているが、それについてどのように思います?〉という聞き方でした。『荷物が多かったら処分をしたほうがいいでしょう』とか『もしペットの世話も出来なければ困りますね』、『純歌さんが父の面倒を見てくれなかったら困ります』と答えたのをまるで私自身が告白したような記事にしたのよ」
「それじゃあ、記事にあった部屋の中の写真はお前が提供したものではないのか?」
「そんなことするワケないし、記者を2階に手引いたことも絶対ないから」
Kは結婚して都内には住んでおらず、仲本と会うこともほとんどなかったし、自宅の鍵も受け取っていないと主張した。また、Kと純歌の仲が悪いということもなく、会えば談笑する間柄だったので、純歌に対する悪意のある新潮の報道は都合よく切り取りしたものだと仲本もKの話を聞いて確信したようだ。娘の告白がある意味誘導されたものである事実が明らかになったことは仲本の大きな不安を取り除いたが、疑問が残った。では一体誰が純歌を貶める材料となる室内の写真を撮ったのか?
仲本には切り札があった。居酒屋やカラオケスナックには防犯用の監視カメラを設置していたし、2階の自宅には飼っていた複数のペットの見守りのために2台カメラが天井部分に付けられていた。それをチェックすれば誰が写真を撮影したのか分かるはずだった。
新潮発売後にすぐにチェックしなかったのは忙しかったこともあったし、娘がそれをした証拠を見つけるのが怖かったからだった。しかし、撮影者が娘ではないことが判明した以上、ためらう必要はない。
仲本は、近々監視カメラを調べてみると純歌に伝えた。週刊新潮に悪意の記事の続編を書かれるのは絶対に阻止しなければならない。そんな気持ちを抱えながら、純歌のアパートに向かった。そしてアパートに到着する直前、仲本を悲劇が襲った。アパート近くの路上で車に撥ねられたのだ。
*JBpress編集部は、仲本工事さん・純歌さんへの取材について週刊新潮編集部に問い合わせをした。〈純歌さんに「部屋の中を見せて下さい」と要望したのは事実か〉、〈仲本さんと口論になり警察官が出動する事態になったのは事実か〉等の質問に対し、週刊新潮編集部からは「平素より取材の過程についてはお答えしておりません。ただし、取材は適切に行っております」との回答があった。