入籍しなかったのは仲本の借金問題が理由

 結婚式は挙げたが入籍しなかったことも筆者は早い時点から知っていた。なんでも仲本が20数年前に銀座で飲食店を経営する人物の保証人になったのだが、その飲食店が失敗し、仲本には借金だけが残ったのだという。その返済が続いていたので死んでも遺産はないし、逆に借金を純歌に負わせるのは忍びない――そうした理由で仲本は入籍に手続きを取らなかったのだと純歌が絵美に話していたという。だからこの「内縁の妻問題」も夫婦間で了承済みのことであり、他人がつっつく話ではない。

「そうなんだよ。1年以上もまえから別居しているのになぜ今頃になって記事にしたのか。しかも純歌さんが仲本さんを放置しているとか、仲本さんに通販の商品代を払わせているとかという書きぶりは、純歌さんを悪者に仕立て上げるのが狙いだと思う」

「仲本さんも純歌さんもこの記事で相当傷つくんじゃないかしら」

「うん。仲本さんは高齢だし、そうなるだろうなあ。ボクができることがあったら助けてあげるって伝えてあげてよ」

 筆者はかつて絵美が金銭トラブルに巻き込まれたときに相談に乗ったことがあった。だから彼女も筆者の動き方を熟知している。

「そうしてもらえたらいいんじゃないかな」

 この時点では、わずか数日後に、仲本が交通事故に遭うことなど誰も予想していなかった。