(湯之上 隆:技術経営コンサルタント、微細加工研究所所長)
ファーウェイのスマホのプロセッサは7nm
「PC Watch」は2023年9月5日、ファーウェイ(華為、Huawei)が中国国内で発売したスマートフォン「Mate 60 Pro」に搭載されているプロセッサ「Kirin 9000s」をカナダの半導体調査会社Tech Insightsが分析したところ、中国のファウンドリ(半導体受託製造企業)、中芯国際集成電路製造(SMIC)の7nmプロセスによって製造されていることが分かったと報じた。
・「Huawei新スマホ『Mate 60 Pro』は中国製7nmプロセスのチップ。TechInsights分析」劉尭、PC Watch
・「TechInsights Finds SMIC 7nm (N+2) in Huawei Mate 60 Pro」TechInsights
ファーウェイは、2012年以降、スマホ出荷台数を右肩上がりに増大させ、2020年第2四半期(Q2)には一瞬サムスン(Samsung)を抜いて世界1位に躍り出た(図1)。ところが、米国による制裁により、2020年9月14日以降に、TSMCから先端半導体を導入できなくなったため、スマホ市場から消えていった。
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ところが今回、ファーウェイは、TSMCではなく、SMICに7nmのプロセッサを生産委託し、これを搭載したスマホ「Mate 60 Pro」を中国で発売した。このSMICに対しては、米国は厳しい輸出規制を課しており、最先端露光装置EUVの輸入が禁じられている上に、その1つ前の世代のArF液浸露光装置すらも、オランダと日本の協力により輸入が停止されている。
では、SMICはどうやって7nmの半導体を開発したのか? また、SMICが5nmの開発を行っており、それが順調であるとの報道もあるがどのように開発しているのか(参考:「『SMICの5nmプロセスへの道筋は良好』と観測筋」EE Times Japan、2023年9月26日)。
本稿では、SMICがどうやって7nmや5nmの開発を行っているか、それがどのような意味を持つか、さらにはSMICに先端プロセッサを生産委託しているファーウェイがスマホ市場で再浮上することができるのか、について論じる。