(写真:CFoto/アフロ)

 半導体の受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が、最先端半導体向け製造装置の納入を遅らせるよう取引先に要請したと、ロイター通信が報じた。顧客需要に対する懸念の高まりを受けた措置だという。

オランダASMLに納入延期要請

 TSMCは、米エヌビディアや米アップル、米クアルコム、ソフトバンクグループ(SBG)傘下のアーム・ホールディングスなど、さまざまな企業向け半導体を受託生産している。

 ロイターによれば、今回の半導体製造装置メーカーに対する要請は、需要見通しに対するTSMCの警戒感を示していると関係者は述べている。

 TSMCは、2023年7月に魏哲家CEO(最高経営責任者)が出したコメントを引用して質問に答えた。「経済状況の悪化、中国市場の回復の遅れ、最終需要の低迷により、顧客企業はより慎重になっており、在庫管理に注意を払っている」(TSMC)

 ロイターによると、この納入延期要請で影響を受けるのはオランダの半導体製造装置大手ASMLなどだ。 ASMLのピーター・ウェニンクCEOは、ロイターとのインタビューで、高性能半導体製造装置の一部の発注が遅れていると説明した。同氏は具体的な顧客名を明らかにせず、「これは短期的な管理上の問題だと思う」と述べるにとどめた。

 一方、ベルギーのデグルーフ・ピーターカム銀行のアナリスト、マイケル・ローグ氏は「最近のAI(人工知能)ブームと、それがもたらす半導体業界への影響については多くの興奮がある」と述べ、エヌビディア向け半導体を受託生産するTSMCにとってAIは好材料だ、指摘した。

 ただし、ローグ氏は「AI半導体に対する需要の強さは、他のセグメントで起こっていることを補うには十分ではない」とも指摘。同氏は、問題となっているセグメントとして、スマートフォン用、パソコン用、自動車用、産業用、の4つの半導体分野を挙げた。