インドは大国意識に目覚めた。G20サミットを主催した同国のモディ首相(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
  • 経済成長が続き大国意識に目覚めたインドに、危うい側面が顔をのぞかせている。
  • カナダのトルドー首相は、同国で6月に起きたシーク教指導者の殺害事件にインド政府が水面下で関与したとの見方を示した。
  • カナダ以外の西側諸国は沈黙しているが、目先の利益を優先し都合の悪いことに目をつぶる姿勢は、中国を「無法国家」にしたのと同様に禍根を残しかねない。

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 このところ国際社会におけるインドのプレゼンスは高まるばかりだ。
 
 世界経済の成長を支えてきた中国に陰りが見える中、インドは好調さを維持している。インド政府は8月31日「今年第2四半期の実質国内総生産(GDP)の成長率は7.8%だった」と発表した。好調なサービス業や個人消費が牽引した形だ。

 グーグルやマイクロソフトなど米IT大手のトップにインド系の人材が就任するケースが多くなっていることも追い風だ。その影響もあってか、欧米企業がグリーンフィールド投資(現地法人を新規設立して工場や販路を整備すること)を中国からインドに切り替える動きが本格化している。

 米調査企業ロジウム・グループが9月13日に発表した調査結果によれば、2022年のインド向けのグリーンフィールド投資は前年比400%増の約650億ドル(約9兆6000億円)となった。一方、2018年に1200億ドルまで膨らんだ中国向けは昨年、200億ドル弱に落ち込んだ*1

*1欧米企業の投資先、中国からインドなどに切り替え続く=報告(9月14日付、ロイター)

 インド株も絶好調だ。代表的な株価指数であるSENSEXは9月15日に7月以来の史上最高値を更新した。日本でも投資信託を中心にインド株への資金流入が増加している*2

*2インド株、内需好調で上昇 車など消費株けん引(9月21日付、日本経済新聞)

 インドは宇宙開発の分野でも国際的な存在感を高めている。

 8月23日、世界で初めて無人探査機を月の南極に着陸させ、9月2日には同国初の太陽観測衛星の発射にも成功している。