長期金利を動かしているのはインフレ率なのか?
そんな暗い見通しを唱える理由は、いま米長期金利を動かしているのは、インフレ率の低下期待などではなく、連邦政府の資金需要増、すなわち新規国債の供給増だと思うからです。
ウォール街は、米連邦公開市場委員会(FOMC)がさらなる金利引き上げに動くかどうか、それも1回なのか2回なのかといったことを話題にしますが、そんなことは誰にもわかりません。何よりも米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長自身、「我々は曇天の下、星を頼りに航海している」と言っているほどなのです。
そんな不確実な予測に対し、米財務省が8月2日に、向こう1年間で国債発行量を6割ほど増やすと発表したことは誰の目にも明らかな悪材料でしょう。しかもFRBが国債の保有額を縮小し、中国が米国債の売却を積極化させる中で国債を大量に発行するのです。債券市場の需給悪化が確実なわけですが、それは債券価格の下落(金利の上昇)で解決するしかありません。
過去を振り返ると、2022年はじめに1.5%だった米長期金利(10年債)の利回りは、2022年11月初旬には4.3%台に乗せるまで上昇しました。その後、1カ月以内に3.5%程度まで低下し、2023年5月下旬までその水準で推移しています。そしてその後、再び4.3%台に戻りました(図1)。
(本記事は多数のグラフを基に解説しています。正しく表示されない場合にはオリジナルサイト「JBpress」のページでお読みください)
転換点となった2022年11月初旬と2023年5月下旬に米国では何があったでしょうか。