韓国人は広く東南アジア全体に住んでいるわけではない。特に多く住んでいるのがベトナムだ。私はベトナムに華僑が少ないことが、その理由ではないかと考えている。南北統一後にベトナム政府が南ベトナムにいた華僑を排斥したために、東南アジアの中でベトナムは例外的に華僑が少ない国になっている。

 朝鮮半島に住む人々は長い歴史の中で、中国人と付き合うことの難しさを知り抜いている。中国人は朝鮮半島に住む人々の上に立とうとする。中国に進出した韓国企業は日本企業以上にさまざまな嫌がらせを受けてきた。そんな韓国人は、華僑が少ないベトナムを選んで進出したのだろう。

 ベトナムにやってくる多くの韓国人はエリートではない。ごく普通の韓国人がベトナムにやって来て、焼肉屋やカフェなどを経営している。韓国は熾烈な競争社会であり、かつ学歴社会。ソウル大学など一流大学を出て財閥系企業に就職できなかった者は、医者や弁護士を除けば「負け組」とされる。そんな社会なので、「負け組」が一発逆転を狙ってベトナムにやって来るとも言われる。

 韓国人は日本人よりもビジネスに積極的だ。ベトナムで何度もそのような話を聞かされた。一発逆転のチャンスがあると聞けば、ベトナムにまでやって来て自分で焼肉店を開業する。そのチャレンジ精神はバブル崩壊後に、何事につけても消極的になってしまった日本人とは大きく異なる。

逆回転し始めた不動産投資

 しかしそんな韓国に逆風が吹き始めた。それはベトナムで不動産バブルの崩壊が始まったからだ。ベトナムにも住宅の価格は絶対に下がらないとする神話が存在した。だが、昨年(2022年)の秋から不動産価格の下落が始まった。ベトナムの不動産バブルは中国ほど膨らんではいないものの、それでもその崩壊は経済に大きな影響を与え始めた。今年になって倒産件数が急増している。