いつの間にか日本が勝者になっていた

 バブル崩壊後に日本社会は消極的になり投資を抑制してきた。会社は内部留保を積み上げ、個人も老後を心配して貯蓄額を増やした。そんな日本とは対照的に、不動産投資に失敗し資金繰りに窮するベトナム人の話をよく聞くようになった。そして、その周辺には同じく資金繰りに窮する韓国人が存在する。中国、韓国、ベトナム、日本、この4つの国の中で、最近、バブル崩壊というニュースを聞かないのは日本だけである。

 21世紀に入った頃から、アジアの人々に日本は「終わった国」だなどと揶揄されてきた。だが、それは日本が他のアジア諸国に比べて早い時期に発展しただけのことであった。だから先に不動産バブルが崩壊し、その後に失われた20年とも30年とも言われる時代を経験しなければならなかった。

 その同じ轍を中国、韓国、そしてベトナムが踏もうとしている。ベトナムはまだ発展途上にあるので、もう一度成長軌道に戻るチャンスがあるとは思うが、それでもバブル崩壊が今後の経済成長に大きな影響を与えることは必定である。

 バブルが崩壊した際には現金を多く持つ者(キャッシュ・ポジションの高い者)が有利である。そして東アジアを見わたせば、日本は期せずしてそのような位置にいる。これまで低成長に悩み「終わった国」などと揶揄されてきたが、中国バブルが崩壊し、それに続いてベトナムや韓国でもバブルが崩壊し始めると、いつの間にか日本が勝者になっていた。皮肉な話である。

 それにしても本国だけでなく、大挙して押し寄せたベトナムでもバブル崩壊に巻き込まれている韓国人たちは、なぜこのような事態に陥ったのか、学歴社会や財閥の存在を含めて社会のあり方を再考する必要があろう。

 ハノイの街角から、確実に変わり始めたアジアが見えてくる。