昨年、インドは大洪水に見舞われた。原因の一つは、脆弱な水処理インフラだ(写真:AP/アフロ)

中国を抜き人口世界一となったインドが、深刻なリスクに直面している。国内総生産(GDP)では2028年に日本を抜き世界3位の経済大国になると言われているが、経済を支える各種インフラが脆弱で、さらなる成長が危ぶまれている。インドが抱えるアキレス腱とは?

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 インドのモディ首相は6月22日から国賓として米国を訪問する。グローバル・サウス(発展途上国の総称)の代表を自認するモディ氏は、国力の増大を武器に国際的な影響力を急速に高めている。今回の訪米もその一環だ。

 今年、インドの人口は中国を抜き世界一となった。そのインドを「世界経済を牽引する存在」と捉える論調は日増しに増えている。国際通貨基金(IMF)はインド経済の今後5年間の成長率を約6%と見込んでいる。2027年には日本を抜いて世界第3位の経済大国になると予測している。 

 実際、インド経済の将来性を有望視する根拠はいくつかある。例えば、グローバル企業の「中国プラスワン」戦略はインドにとって追い風だ。多くの国が中国一辺倒の投資に不安を感じる中、リスクの分散先にインドが選ばれるようになっている。

 インド経済の成長を支えているのは、その人口の多さだけではない。若年人口の比率も、世界の中で最も高い国の一つだ。インド人の年齢の中央値は28歳で、米国や中国(ともに38歳)より10歳も若い。

 学生の3人に1人が理工系を専攻していることも強みだ。国連教育科学文化機関(ユネスコ)によれば、この比率は世界の主要国の中で最も高い。世界のIT(情報技術)産業は今やインドの理工系大卒者抜きでは成り立たない状況になっている。

 インド経済は1990年代から先進国からのアウトソーシングの中心地として注目されるようになった。IT集積地として名高いベンガルール市は「インドのシリコンバレー」と呼ばれている。同市には世界のIT企業がひしめくだけではなく、金融機関などもITシステムを開発・運営するための大規模な拠点を設けている。米ゴールドマン・サックスもその一つだ。

 だが、こうした経済成長がこの先も続くとは限らない。筆者は、危ういと考えている。経済を支えるインフラがあまりにも脆弱だからだ。